プロジェクト

Workshop

文化遺産防災の優秀な取組

立命館大学ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修(ITC)は、今年度、世界的な新型コロナウィルス感染拡大により中止となりましたが、その代替プロジェクトとして、6月27日(土)、7月4日(土)に文化財保存修復研究国際センター(ICCROM)と共同で開催したウェビナー「文化遺産防災における人材育成:ポストコロナの挑戦と創生」(Webinar Series: Capacity Building for Disaster Risk Management of Cultural Heritage: Challenges and Opportunities in Post-COVID Times)に続いて、10月8日(木)、9日(金)、10日(土)にICCROMと共同でワークショップ「文化遺産防災の優秀な取組」(Good Practices for Disaster Risk Management of Cultural Heritage)を開催いたしました。ワークショップの目的は、「過年度研修生が取組んだ優れた事例を選定し表彰すること」と「14年間に及ぶITCの振り返りと過年度研修生とのネットワークを強化すること」であり、大変有意義な成果を実現しました。

「優れた事例の選定と表彰」

2006年より始まったITCの過年度研修生よる研修後から現在まで自国での文化遺産防災に関する活動成果とその報告に対して、優れた事例を選定し表彰するため、まず公募を実施いたしました。27名の過年度研修生からの応募があり、書類審査を実施した上で、そのうち以下に示す6名の優れた事例が選ばれました。また、最優秀事例として1名の特別賞(Exemplary Practice Award)が選ばれました。

  1. Abdelhamid Salah Abdelhamid SAYED (ITC 2014, Egypt),
    “Fire risk mitigation strategies for urban heritage site in Cairo, Egypt”
  2. Dulce María GRIMALDI (ITC 2016, Mexico),
    “Mapping risks for cultural heritage in Mexico”
  3. Elena MAMANI (ITC 2014, Albania/Greek),
    “Utilisation of traditional water cisterns as water source in case of fire in Gijokastra, Albania”
  4. Junko MUKAI and Dechen TSHERING (ITC 2010, Japan/Bhutan),
    “Disaster risk management plan for Punakha Dzong, Bhutan”
  5. Marcela HURTADO (ITC 2015, Chile),
    “Disaster risk management plan for Humberstone and Santa Laura altpeter works, Pozo Almonte, Chile”
  6. Vanessa Anne TANNER (ITC 2016, New Zealand),
    “Heritage New Zealand Pouhere Taonga (HNZPT) draft guidance for preparing heritage risk management plans”

 

ワークショップの1日目は、ICCROM所長であるDr. Webber Ndoroおよび当研究所所長大窪健之教授による開会挨拶により開始されました。 その後、世界銀行のBarbara Minguez Garcia(ITC 2016, Spain)が、日本での優れた事例について “Good practices for DRM of cultural heritage in Japan ”と題した特別講演をして頂きました。 それに引き続き、上記の6名の方々が、ワークショップの1日目と2日目に渡って発表を行いました。 これらの発表後、ITC講師5名で構成される審査団による審査を経て、最も優れた2名の事例に対して Best Practice Awardを授与いたしました。このBest Practice Award受賞者は、以下の方々です。

・Dulce María GRIMALDI (ITC 2016, Mexico)
・Elena MAMANI (ITC 2014, Albania/Greek)

また、最終日である3日目にはExemplary Practice Award 受賞者であるMing Chee ANG (ITC 2017, Malaysia)による “George Town world heritage city, Malaysia”と題した発表をして頂きました。そして最後に、バーチャル表彰式 および閉会挨拶が、所長大窪健之教授により行われました。このように、3日間に及んだワークショップは、エジプト、 メキシコ、 ギリシャ、ブータン、チリ、ニュージーランド、マレーシア、日本という8か国での災害リスクマネジメント(DRM)に 関する優れた事例からなる豊富な内容となりました。

 

「ITCの振り返りと過年度研修生とのネットワーク強化」
3日目の最終日には、ITCを振り返るため、ITC創立者である土岐憲三先生 (立命館大学特別研究フェロー、歴史都市防災研究所初代所長)にITCの成立ちについてお話(事前録音ビデオ)をして頂きました。 また、これまでの各年度ITC研修生から1人を選定し、①ITCに関する思い出、②ITCで学んだことの活用、 ③将来のITCへのメッセージという3質問に対して事前インタビューを実施し、その録画をワークショップで紹介しました。 土岐先生や過年度研修生のご協力のおかげで、ITCの14年間の歴史と形成されてきたITCファミリーの取組が共有され、 今後もITCで形成されたネットワークを活かして、さらなる発展を目指すこととなりました。

3日間に渡るワークショップでは、ITC講師、過年度の研修生、一般視聴者など、各日約150名が ズームビデオコミュニケーションアプリケーション(ZOOM)にて参加しました。今回、過年度研修生による 成果発表とその評価・表彰という新しい取組によって、世界的な文化遺産防災ネットワークはさらに強化できたと考えております。 尚、ワークショップで発表された優れた事例は、今年度中に当研究所ウェブサイト上にて動画配信を開始いたします。 また、発表内容ディスカッション部分を含めた形で、プロシーディングス(Proceedings)を成果報告として発刊する予定としております。

立命館大学ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修(ITC)は、これまでの研修実績により高い評価を受けております。 これは、立命館大学内外の研究者、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、文化財保存修復研究国際センター、 国際記念物遺跡会議防災国際学術委員会(ICOMOS/ICORP)、国際博物館会議防災危機管理委員会(ICOM)の国際機関、文化庁をはじめとする 行政機関、そして現場の専門家などからなる多彩な講師陣や、そして重要なこととして世界各国からの研修者の積極的な参加によるものです。 次年度も、本国際研修の代替プロジェクトを複数実施していく予定で、今後も当研究所は国際社会に向けた成果発信や貢献活動を継続してまいります。

写真

Ms. Barbara Minguez Garcia<br>のプレゼンテーション
Ms. Barbara Minguez Garcia
のプレゼンテーション
Mr. Abdelhamid Salah Abdelhamid <br>SAYEDのプレゼンテーション
Mr. Abdelhamid Salah Abdelhamid
SAYEDのプレゼンテーション
Ms. Vanessa Anne TANNER<br>のプレゼンテーション
Ms. Vanessa Anne TANNER
のプレゼンテーション
Ms. Elena MAMANI<br />のプレゼンテーション
Ms. Elena MAMANI
のプレゼンテーション
Ms. Marcela HURTADO<br />のプレゼンテーション
Ms. Marcela HURTADO
のプレゼンテーション
Ms. Dulce María GRIMALDIのプレゼンテーション
Ms. Dulce María GRIMALDI
のプレゼンテーション
Ms. Junko MUKAI<br />のプレゼンテーション
Ms. Junko MUKAI
のプレゼンテーション
Dr. Ming Chee ANG<br />のプレゼンテーション
Dr. Ming Chee ANG
のプレゼンテーション
Best Practice賞の発表
Best Practice賞の発表
集合写真
集合写真