広報 (新聞掲載記事・研究会案内)

第1回公開セミナー「いま、あなたの文化財が狙われている」を開催しました。

開催日: 2013年8月1日(木) 13:30~17:30
開催場所: 立命館大学 衣笠キャンパス 創思館1階 カンファレンスルーム
参加者: 80名
講演者: 大河内 智之(和歌山県立博物館 主査学芸員)
     井上 元次(京都市消防局 予防課長)
     川道 美枝子(関西野生生物研究所 所長)
     谷口 仁士(立命館大学歴史都市防災研究所 副所長/
           神社仏閣防犯システム研究コンソーシアム 代表)

概 要:
このセミナーの趣旨は、「今、文化財は多くの危機にさらされている。自然災害ばかりでなく、犯罪(盗難や放火)やアライグマなどによる被害から、文化財をどのようにして守るべきかー関係機関と専門家が、現状と対策について」である。関係機関や専門家の4人から、その現状について下記のとおり報告頂いた。

和歌山県立博物館主査学芸員・大河内 智之氏
和歌山県内では平成22年から平成23年に被害届が60件、160体を超える被害届が出された。被害に遭遇した多くは無住職寺からであった。県立博物館では、各地に残っている無防備な寺院からの資料の緊急避難(避難先は博物館)とともに-緊急アピール・文化財の盗難多発中-と題する企画展示を開催し、その実態を説明するとともに「文化財の大切さ」もアピールした。

京都市消防局予防課長・井上 元次氏
京都市内で、昭和23年から平成25年3月までに発生した文化財関係の火災件数は150件に上っている。年平均約2.3件となる。さらに、その原因は45%が放火であるとの報告である。この大切な文化財を守るため自動火災報知器、消防署への自動通報、境内の消火施設(放水銃など)の充実を図っている。さらに、文化財防災マイスターの育成などソフト面からの対応も行っているとの報告がなされた。放火、失火、類焼などで焼亡した文化財は、命と同じで元に戻ることはない。

関西野生生物研究所所長・川道 美枝子氏
京都府内や京都市内の文化財で確認されたアライグマの被害についての報告があった。その実態は、殆どの社寺仏閣ではアライグマの訪問や住着きの痕跡が確認されている。被害として、仏像への引っ掻き傷や天井裏での糞尿によるシミや汚染などが報告された。現在、寺社の管理者では捕獲を目的としたアライグマ対策を行っているが、常に後手々々状態である。管理者によるアライグマの痕跡判断、侵入に対する防御可能な建造物への取り組みも必要である。

立命館大学歴史都市防災研究所副所長・谷口 仁士氏
全国の刑法犯罪件数は減少傾向を示しているが、社寺仏閣への侵入窃盗件数は平成16年から急増している。全国の寺社への盗難などの人為被害の調査結果や今後の立命館大学歴史都市防災研究所の取り組みが紹介された。その中で、最近の盗難被害や火災被害に遭遇した文化財所有者へのヒヤリング結果、最新の自動防犯システムの実証実験結果などについての報告もあった。