プロジェクト
レポート
富士常葉大学環境防災科学部の小川雄二郎教授による「文書館・図書館の防災対策」と題する発表があった。
文化遺産を収蔵していたり、それ自身が文化遺産であるこれらの施設の防災対策は、ほとんどなされていない。世界の多くの事例をもとに、被害のうち最も多い原因は戦争で、他に市町村合併による散逸など、人為によることが大きな割合を占めていることを明らかにされた。これらの施設に収納されているものは、水や泥に弱く、一般的な消火を念頭においた対策では収蔵品を逆に破損する危険性が高い。効果的な対策としては職員などに対する研修は勿論のことであるが、事前に対応マニュアルを持っておく必要があることなどを述べられた。
東京海上日動リスクコンサルティング(株)開発グループリーダーの矢代晴実氏から、「災害と損害保険」と題する発表があった。
損害保険の概要とリスクマネージメントの説明があった後に、地震を例にとって地震保険・地震危険担保特約について、災害との関わりに触れられた。また、災害を対象にした保険会社にとってのいわゆる商品(例えば、気候デリバティブなど)についても実例を交えながら、新しい動きについて発表された。
東本願寺の延澤栄賢氏より「東本願寺における防災の取り組み」と題する発表が行われた。
まず、東本願寺御影堂の改修工事の紹介と、それに伴う防災設備・システムについての特徴と現在の防災・防犯体制について触れられた。その後、明治時代より伝えられた本願寺水道とお堀を防災や地域の環境整備に活用する試みを述べ、東本願寺を地域の防災拠点とする可能性について様々な観点から検討された成果が発表された。
関西国際大学人間学部人間心理学科教授の桐生正幸氏により、「放火の犯罪心理学」と題する研究発表が行われた。
人間によって引き起こされる犯罪、とりわけ放火という犯罪行動の様々な心理的背景が、これまで心理学において蓄積されてきた理論的・実証的研究を基に丁寧に解説された。また、防犯活動の問題点を、①防犯グッズ、②防犯パトロール、③防犯教室 の点から整理し、平時から防犯活動に対する取り組みを着実に行うと同時に、これらを支援できる学問的研究の重要性が示された。
国際高等研究所フェロー(京都大学名誉教授)の木下冨雄氏により、「群衆事故の要因とその制御法」と題する研究発表が行われた。
これまで発生した大規模な群衆事故は、ハード面(構造物)とソフト面(情報や人の誘導法)の相乗作用によって発生したことを、多くの事例を引きながら解説された。そして、それを制御するためには、ハード・ソフトの両面から適切な対応が必要であり、実際に行われている適切な事例が、その理由とともに示された。
名古屋工業大学教授の谷口仁士氏より、「建造物文化財の地震リスクマネジメント」と題する研究発表が行われた。
主として、東海地方で起こるとされる東海、東南海地震によって、建造物文化財にどの程度の被害が予想されるかについてこれまでの研究を整理された。さらに、そのリスクマネジメントについて事前対策事例と事後対策事例について紹介され、技術的な面だけでなくファイナンスマネジメントも重要であることが示された。