研究ハイライト

2013/07/10

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文化遺産防災技術研究部会の主要な課題

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歴史的な伝統の技で創出されてきた建造物をはじめとする文化遺産を災害から守るために、文化遺産が立地する場所の立地条件、地理的、地質的条件などに応じた防災技術を開発する。

【モデル地域・地区】
・高山市
・篠山市篠山伝統的建造物群保存地区
・南丹市美山町北伝統的建造物群保存地区
・タイ王国アユタヤ市

(1)高山市伝統構法木造建築物の改修マニュアルの構築

飛騨高山の伝統構法木造建築物を災害から守るために、伝統構法木造建築物の改修マニュアルを作成する。そのために、地域の行政や建築に係わる実務者の協力のもとに伝統構法木造建築物の構造詳細調査、耐久性調査、防耐火性能調査などを実施し、性能評価および補強に関する研究を行う。この調査研究に基づいて改修マニュアルを構築し、高山市に提案する。この改修マニュアルを用いて改修促進等を行う。現在、高山市域の伝統構法木造建築物の構造詳細調査を実施している。

飛騨高山の伝統構法木造建築物と古い町並み

 


(2)地域防災情報ネットワークの開発

住宅用火災警報器が感知した火災発生情報を地域全体で共有できれば、地域住民による初期消火や避難活動に迅速に対応できるようになる。(特許取得)
最終的に火災発生時の情報共有化を目指し、既存のシステムを組み合わせ、実証訓練で検証しながら、地域に最適な形での「実用化」を目指す。
現在、防災機器メーカーと共同で、篠山市篠山、南丹町美山北の2つの重伝建地区でユーザーヒアリングを実施中。

 

 

 

(3)日常利用が可能な市民消火栓の開発

防災設備の日時用利用を促進することは、特別なメンテナンスや防災訓練を不要にできる可能性を持つ。市民消火栓に関しては、ホースの重量が重い、ホースの地面との摩擦による摩耗、収納作業と水抜き作業が煩わしい、という問題がある。
ホースの耐久性と,収納・水抜きの手間の改善を目標に、高耐久ホースと回転ドラム型収納箱を試作する。
現在、住民による操作性の評価実験を準備中。

 

(4)タイ王国アユタヤの文化遺跡の防災技術開発

洪水多発地域に位置するアユタヤ(タイ王国)では、文化遺跡の沈下や傾斜が激しく、放置すれば倒壊の恐れがあるため、沈下や傾斜への対策ならびにアユタヤ地域の洪水シミュレーションに基づく地域防災計画を提案する。

煉瓦造モニュメントの地盤沈下による傾斜

 

(5)世界遺産・熊野那智大社、熊野古道における2011年台風12号被災実態解明および防災対策の提案
 平成23年台風12号により被災した、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されている熊野那智大社や横垣峠(熊野古道)等を対象とし、現地調査および数値シミュレーション、GIS分析等から被災実態の解明に関する研究を行っている。
 また、世界で2例しかない「道」という形態の世界遺産に対して、土砂災害と観光客の避難に焦点をあて、防災に関する情報提供を目的とした研究を展開している。
熊野那智大社の土石流源頭崩壊
大規模崩壊により流失した横垣峠
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