プロジェクト

レポート

2012-12-12第47回京都歴史災害研究会

奈良大学文学部教授海津正倫氏によって、「ベトナム中部の歴史都市・ホイアン及び周辺地域の水害」と題する発表が行われた。ホイアンは、1999年に世界文化遺産に指定された歴史都市であるが、ドウボン川の河口付近にあって、その周辺地域も含めて水害を受けやすい環境にある。地形分類図の作成や聞き取り調査結果から、水害リスク図を提示し、特に水害を受けやすい地域などに言及された。その結果、ホイアンの古い町並みは、徐々に水位をあげるというドウボン川の水害の特徴によって残されてきたことなどが指摘された。

2012-12-08G-COE最終報告会

びわこ・くさつキャンパスのプリズムホールにて、グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る『文化遺産防災学』推進拠点」最終報告会「文化遺産を災害から守り継承していくために」を開催した。外部評価委員の出席のもと、5年間の活動紹介と教育研究成果について報告があった。活動の総集編としてまとめた「文化遺産防災ハンドブック」についても紹介があった。

【開会の辞】
川口清史(立命館大学総長)

【基調講演】
文化財の継承保存と防災~京都御所と冷泉家住宅・典籍をめぐって~
冷泉為人((財)冷泉家時雨亭文庫理事長・立命館大学特別招聘教授)

【G-COE文化遺産防災学推進拠点の趣旨】
大窪健之(立命館大学教授)

【拠点研究活動成果】
1) 京都の歴史災害と文化財
山崎正史(理工学部教授)
吉越昭久(文学部教授)
土岐憲三(歴史都市防災研究センター教授)
2) 文化遺産を核とした周辺地域の防災環境整備
深川良一(理工学部教授)
小川圭一(理工学部准教授)
3) 文化遺産防災のハンドブック
大窪健之(理工学部教授)

【国際貢献・教育活動成果】
1) 国際プロジェクトの活動
共同研究報告 : 谷口仁士(歴史都市防災研究センター教授)
ユネスコ・チェア国際研修 : 板谷直子(歴史都市防災研究センター准教授)
2) 教育等の活動成果について
伊津野和行(理工学部教授)

【外部評価委員会からのコメント】
中川武(早稲田大学教授)

【閉会の挨拶】
土岐憲三(立命館大学歴史都市防災研究センター センター長)

2012-11-09歴史災害セミナー

「北野天満宮の石灯籠から京都の地震史を探る」というテーマで、京都大学大学院人間・環境学研究科助教の加藤護氏からの話題提供があり、その後活発な意見交換が行われた。北野天満宮には一部が破損した石灯籠があり、これは文政3(1830)年の京都地震によるものではないかとの考えから調査され、破損の特徴、石灯籠に刻まれた年代などから多くの資料提供が行われた。京都では近年に大きな地震を経験していないが、北野天満宮の石灯籠は、文政期の地震の特徴を知るための重要な手がかりになることを再確認することができた。

2012-10-19第46回京都歴史災害研究会

神戸大学文学部教授の藤田裕嗣氏によって、「歴史地理学の観点による東日本大震災の復興支援―阪神淡路大震災を経験した神戸大学教員の発想―」と題する発表が行われた。歴史地理学の中では、明治期に作成された地籍図と土地台帳は、これまで過去の景観復原などに用いられてきたが、福島県相馬市における調査から復旧復興など将来の事業にも利用できるのではないかという興味ある指摘がされた。また、その指摘の利点だけでなく、課題についても示された。なお、この研究は科研費のプロジェクト研究によって実施されており、成果が期待されるところである。

2012-09-22ユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修2012

2012年9月8日から22日まで、約2週間にわたり、第7回目となるユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修2012を実施しました。
今年度は、フィジー、インド、韓国、マレーシア、ミャンマー、ニュージーランド、パキスタン、スリランカ、トルコ、ベトナムから11名を招聘しました。
国際研修は、講義、見学、ならびに世界遺産である京都を対象としたワークショップ、そして、各国がそれぞれに取り組むケーススタディプロジェクトによって構成されています。これに加えて、神戸市と東日本大震災の被災地の一つである宮城県南三陸町において現地研修を行っています。昨年度に続き訪れた南三陸町では、地元の方々にお話を伺うとともに、復興計画の進捗状況を学びました。各国のケーススタディの講評には、イクロム(ICCROM:文化遺産国際協力センター)のジョセフ・キング氏にも加わっていただき有益なご助言をいただきました。
ユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修は、これまで実施した研修実績をもとに、立命館大学内外の研究者、国際機関や行政そして現場の専門家など多彩な講師陣、また、世界各国からの研修者の積極的な参加により運営されています。今後さらに内容の充実をはかりながら、継続的に開催することが望まれます。

2012-09-02京都府総合防災訓練

京都府大山崎町の淀川河川公園で開催された京都府総合防災訓練に、伊津野、小川、崔と学生2名で参加した。ポスター展示を行い、来場者にG-COE活動について説明した。

 

東日本大震災復興状況視察 (2012.08.20)

被災後1年半を経過した東日本大震災の現場において、町並みや文化遺産を中心とした復興状況について、昨年に被災状況を視察した場所を中心に8/20~23の日程で追跡視察を行った。18名のメンバーで、石垣が地震で崩れた仙台の青葉城跡、津波被害の大きかった仙台市閖上地区や東松島市野蒜地区、多賀城市、大きな被害を免れた松島町の円通院と瑞巌寺、さらには2004年岩手・宮城内陸地震で被害を受けた平泉の中尊寺と骨寺村荘園を見て回った。復興の現状と課題を学び、今後の対策や次の震災に備えるための知見を得た。

2012-07-13第45回京都歴史災害研究会

新潟大学人文学部教授の矢田俊文氏によって、「歴史地震と家屋倒壊率の研究」と題する発表が行われた。まず、史料をもとに16世紀・17世紀における歴史地震の事例を紹介した後、1828年の三条地震・1751年の高田地震・1858年の飛越地震における家屋倒壊率に関する成果に触れられた。特に、全壊率が50%を超える場合や即死率が20%を越える場合に、震源域を特定する指標になることなど興味ある結果が示された。

2012-07-07第6回歴史都市防災シンポジウム

ひと・まち交流館 京都にて、第6回歴史都市防災シンポジウムを開催しました。歴史都市や文化遺産の防災に関する52件の研究発表と活発な討議が行われ、全国から約160人の参加がありました。
セッションは、火災、木造建造物、構造、地震・耐震、水害、土砂災害、津波・情報技術、教育・住民参加、防災計画、経済評価、防災広場・避難、観光・交通と多岐にわたりました。
なお、シンポジウムで発表された研究成果については「歴史都市防災論文集Vol.6」として刊行しております。

2012-06-30G-COE定例研究会

各PGから以下の発表があり、質疑応答が行われた。
(1)脆弱性PG「Global Trends in Disaster Risk Management of Cultural Heritage:  Achievements and Challenges」Rohit Jigyasu
(2)歴史災害PG「東北地方の津波碑の立地と被災について」北原 糸子、大邑 潤三
(3)防災技術PG「木造建築の竜巻被害について」大岡 優
(4)計画・政策PG「本願寺水道の再生と祇園南地区での延焼抑止効果について」金 度源

2012-04-14G-COE定例研究会

まず、大窪リーダーより、2012年度の活動や最終とりまとめ方針について説明があった。次に、2011年度活動報告と2012年度活動計画に関して、各PGから説明が行われ、質疑応答がなされた。脆弱性PG(山﨑教授)、歴史災害PG(吉越教授)、防災技術PG(伊津野教授)、計画・政策PG(小川准教授)、清水寺PG(大窪教授)、国際PG(谷口教授)。その後、今後の進め方について全体で議論した。プログラム全体で最大限の情報共有をはかり、一体的なとりまとめ作業を促進することとする。

2012-03-14第44回京都歴史災害研究会

青山学院大学文学部教授の飯島渉氏によって、「災害としての感染症-環境・社会・ヒト-」と題する発表が行われた。まず、感染症の歴史研究への軌跡を話された後に、人間と自然の相互作用としての感染症の意義づけをされた。特に、人間が自然を開発する(農業化・都市化・産業化など)ことで起こる環境変化が感染症と極めて関わりが深いことを、いくつかの感染症の事例(マラリア・ペスト・インフルエンザ・コレラ・天然痘・結核など)で紹介された。また、感染症のデータの管理などにも話が及び、国によって大きな違いがあることなどを明らかにされた。

2012-01-20第43回京都歴史災害研究会

立命館大学理工学部都市システム工学科助手の林倫子氏によって、「明治後期の京都鴨川における河川空間利用の展開と変容」と題する発表が行われた。鴨川の夏期における貸座敷業や飲食業など様々な利用に関して、その制度や実態の解明を「官有地借使用関係書類」などをもとに行った。その結果、先斗町などの営業者とそこを借用している人々が空間利用形成に関わっていたこと、京都府が治水や美観の整備のためにそこでの活動を制限していたことなどが明らかにされた。

2012-01-18G-COE定例研究会

立命館大学朱雀キャンパスにおいて定例研究会が開催された。G-COEで展開しているカトマンズプロジェクトの進捗状況について、構造チーム(ネパール・トリブバン大学Prof.Maskey、本学PD Hari Parajuli)、計画チーム(ネパール・トリブバン大学教授Prof.Tiwari)、防災計画(ジグヤス教授、板谷准教授)の3項目について研究発表がなされ、議論がなされた。また、文化遺産防災対策の手引「実践編」の構成方針について総則、何を守るのか?、何から守るのか?、どうやって守るのか?の4項目について提案、議論がなされた。

2011-12-12G-COE定例研究会

立命館大学歴史都市防災研究センターにおいて定例研究会が開催された。G-COEで展開している韓国関連のテーマについて、研究発表と討議が行われた。連携拠点の研究推進メンバーである韓国・明知大學校建築大學の金王稙教授から「韓日文化財の特殊性と普遍性」について講演があり、続いて、歴史都市防災研究センター研究員の金玟淑氏より「安東河回村の災害脆弱性と防災対策」に関する調査報告があった。最後に、立命館グローバル・イノベーション研究機構の谷口仁士教授より「文化遺産の継続・保存への取り組み~日・韓共同研究をまとめるに際し~」と題する話で閉会した。

2011-12-05第42回京都歴史災害研究会

京都市上下水道局琵琶湖疏水記念館研究員の白木正俊氏によって、「御所用水・御所水道建設の政治過程ー明治後期の琵琶湖疏水水利使用の一事例ー」と題する発表がおこなわれた。まず、琵琶湖疏水と御所用水・御所水道の関係に関する説明に触れた後、それらの建設までの経緯や問題点を述べられた。最終的に、御所用水は京都市に移管されて暗渠化されて下水道となったこと、御所水道は防火用水としての機能を果たしたがその後廃止となったことなどを詳しい資料をもとに論じられた。

2011-11-14第41回京都歴史災害研究会

人と防災未来センター主任研究員の石川永子氏によって、「東日本大震災 復興まちづくりの課題―南三陸町の復興計画策定支援を通して考えること―」と題する発表が行われた。宮城県南三陸町における半年以上にも及ぶ東日本大震災からの復興支援活動を通して、浮かびあがった様々な課題に触れられた。例えば、これまで頻繁に行われてきた避難訓練は、チリ津波を想定したものであったことや、市街地の復興と漁村域の復興には明らかな違いがあることなどである。復興計画は、これからが本番であり、この計画の実現のためには多くの合意形成がなされなくてはならないことなどにも話が及んだ。

2011-11-12G-COE定例研究会

立命館大学防災システムリサーチセンターにおいて定例研究会が開催された。G-COEで展開している国際活動について、各担当者から報告があった。1.ユネスコチェア国際研修(板谷)、2.ネパール・プロジェクト(大窪、吉田)、3.若手専門家育成の国際展開(鐘ヶ江)。
いずれも活発な活動が行われており、今後も継続予定である。最後に大窪リーダーより、文化遺産の災害対策パッケージとりまとめについて説明があり、熱心な討議が行われた。

2011-10-08G-COE定例研究会

立命館大学歴史都市防災研究センターにおいて定例研究会が開催された。各プロジェクトグループから発表があり、熱心な討議が行われた。発表者とタイトルは次の通り。米島万有子(文学研究科博士課程後期課程)「文化遺産と蚊の分布」、台蔵憲(理工学研究科博士課程後期課程)「新型原位置試験による仙台城石垣崩壊部の地盤特性評価」、林倫子(理工学部都市システム工学科助手)「東日本大震災における地域文化遺産の避難所としての活用実態-宮城県広域石巻圏の津波被災地域を対象として-」、森下雄治(理工学研究科博士課程後期課程)「江戸の防火対策について-享保期の都市政策を中心にして」。

2011-09-10ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修2011

2011年9月10日から24日までの2週間にわたり、第6回目となるユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修を実施いたしました。
今年度の国際研修は、歴史都市の減災のための統合的アプローチをテーマに、コロンビア、ジャマイカ、メキシコ、ケニヤ、ウガンダ、インド、バングラデシュ、中国から9名の研修者を招聘して実施しました。国際研修は、講義、見学、ならびに世界遺産である京都を対象としたワークショップ、そして、各国がそれぞれに取り組むケーススタディプロジェクトによって構成されています。これに加えて、本年度は東日本大震災に関する特別講義、宮城県南三陸町の現地研修を行いました。
ユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修は、これまで実施した研修実績をもとに、立命館大学内外の研究者、国際機関や行政そして現場の専門家など多彩な講師陣、また、世界各国からの研修者の積極的な参加により運営されています。今後さらに内容の充実をはかり、文化遺産防災のより一層の推進を目指していきます。


清水寺見学

清水寺を事例としたリスク評価演習

南三陸町現地研修(魚竜館付近)

南三陸町現地研修(大雄寺山門下)

緊急時対応演習

修了証書の授与
2011-07-11第40回京都歴史災害研究会

奈良女子大学文学部人文社会学科准教授の西村雄一郎氏による「日本におけるGISを用いた災害情報共有の可能性と課題」と題する発表が行われた。GISが阪神淡路大震災において、災害を記録し・地図化し・伝達するツールとして極めて有効であることが認識されて以降、大きな進化をとげた。とりわけ、参加型GISの普及は、その後の災害復旧・復興にめざましい効果をあげたことなどを多くの事例で示された。しかし、誰のための参加型なのかなど、今後解決しなければならない解題もあることに触れられた。

2011-07-02第5回歴史都市防災シンポジウム

立命館大学びわこ・くさつキャンパスにて、第5回歴史都市防災シンポジウムを開催しました。歴史都市や文化遺産の防災に関する47件の研究発表と活発な討議が行われ、全国から120人以上の参加がありました。セッションは、市街地防災、社会システム、避難行動、歴史遺産、火災、消防、防災技術、耐震、東日本大震災、地震被害、海外事例、斜面防災と多岐にわたりました。来年度(2012年度)も7月頃にシンポジウムを開催する予定です。
なお、シンポジウムで発表された研究成果については「歴史都市防災論文集Vol.5」として刊行しております。



2011-05-31東日本大震災による仙台周辺での被害調査・報告会

BKCキャンパスにおいて、G-COEメンバーの理工学部教授である里深好文氏、大窪健之氏、深川良一氏、伊津野和行氏による東日本大震災の被害報告会が開催され、140名の参加があった。4月末から5月始めにかけて実施された仙台周辺における被害調査の報告を主に、津波被害の概要、地域文化遺産の避難所としての活用、斜面や堤防の被害、構造物の被害について説明があった。

 

2011-01-28第39回京都歴史災害研究会

東京大学地震研究所特任研究員の西山昭仁氏によって、「近世京都における地震災害の特徴」と題する発表があった。京都に大きな被害を与えた近世の3つの地震(伏見地震、寛文近江・若狭地震、文政京都地震)を取り上げて、史料やこれまでの研究をもとに興味深い被害の実態(例えば、地震直後に大火の発生がなかった、都市の拡大にともなって被害が拡大した、瓦葺屋根の普及により被害が拡大した、地震被害と震源の位置とは直接関係しない、など)を明らかにした。

2010-12-18G-COE定例研究会

立命館大学朱雀キャンパスにおいて定例研究会が開催された。NHK報道局(災害・気象センター)記者の入江さやか氏に「四川大地震の被災地はいま」と題した講演をしていただいた。被災地の震災史跡化計画と集団移転、観光村の整備、そして消えゆく伝統的住宅建築について、新しい取材結果を含めた話があった。また、歴史都市防災研究センターの谷口仁士教授からも四川大地震による歴史都市の経済被害について、話題提供があった。

2010-11-12第38回京都歴史災害研究会

本学歴史都市防災研究センター教授の北原糸子氏によって、「関東大震災時の京都府の救援体制についてー京都府の行政資料を中心にー」と題する発表があった。関東大震災を救援体制という面からとらえると、救援を依頼された各府県の対応が異なることがわかったが、特に大阪府の果たした役割が大きかったことが特徴的である。京都府も避難民の受け入れで様々な組織が動いたことが、多くの行政資料から判明した。

2010-10-15第37回京都歴史災害研究会

大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授の森栗茂一氏により、「災害経験をきっかけとした個人的学術イノベーション」と題する発表がおこなわれた。(事前に公表されたテーマとは多少異なっているが、内容的には大きな違いはなかった。)発表者がこれまで災害でかかわった研究や事業について、いくつかの事例(地蔵盆、住吉台くるくるバスなど)をあげて、この課題を深く掘り下げわかりやすく発表された。

2010-10-09G-COE定例研究会

防災システムリサーチセンターにて定例研究会が開催され、33人が参加した。各プロジェクトグループ(PG)から1人ずつ発表があり、質疑応答が行われた。

  1. 脆弱性PG「2010年度国際研修等にみる海外の文化遺産の脆弱性」 益田兼房(歴史都市防災研究センター教授)
  2. 歴史災害PG「GISを用いた歴史災害に関する時空間情報の可視化」 塚本章宏(学振PD)
  3. 防災技術PG「レンガアーチ橋の組積要素実験」 岸祐介(D3)
  4. 防災計画・政策PG「歴史都市における災害時交通マネジメントとしての道路モニタリングシステムに関する研究」 安隆浩(PD)

 

2010-10-09歴史災害セミナー

「京都盆地東縁の災害環境」をテーマに、以下の3名の発表があり、活発な議論が行われた。まず、立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構教授の岡田篤正氏から、「活断層」について、この地域で判明している活断層の特徴とその活動時期についての発表があった。続いて、同じ立命館グローバル・イノベーション研究機構教授の川崎一朗氏から、「地震」について、主に理論的見地から規模予測などの発表があった。最後に、立命館大学歴史都市防災研究センター客員研究員の諏訪浩氏から、「土石流」について、主に修学院・音羽川、清水寺裏山の災害事例に詳細な発表が行われた。いずれも自然科学的な見地から、歴史災害を考察しようとした発表であった。

2010-09-26立命館創始140年・学園創立110周年記念 立命館大学・イコモスICORP国際シンポジウム「文化遺産を災害からどう守るか:防災と災害復旧」

当センターのカンファレンスホールにて立命館創始140年・学園創立110周年記念 立命館大学・イコモスICORP国際シンポジウム「文化遺産を災害からどう守るか:防災と災害復旧」を開催した。今回のシンポジウムは、今年1月のハイチ大地震をうけ復旧過程における文化遺産の保護および防災を考える場としてもうけられたものである。そのためイコモス文化遺産防災国際学術委員会(以下、ICORP)委員等の国際的専門家とともに、文化遺産を守るために災害復旧という観点を含めた防災について京都および世界の現状を検討し、今後の課題や取り組みの指針を京都府市民および世界に発信することがその目的であった。本会議はイコモス文化遺産防災国際学術委員会との共催であり、外務省・文化庁・日本イコモス・京都府・京都府教育委員会・京都市の後援を頂いて行った。また、文部科学省グローバルCOEプログラム 立命館大学「歴史都市を守る『文化遺産防災学』推進拠点」(以下“GCOE”)の一環として実施された。

会議の開催にあたり、GCOE拠点リーダである本学の大窪健之教授より会議の目的や趣旨に関する説明があり、その後、講演およびパネル・ディスカッションが続いた。

まず、イコモス会長のグスタヴォ・アローズ氏よりハイチ大地震からの教訓として防災対策の必要性(保護体制、防災シナリオ策定など)と、今後の世界的大災害の復旧過程におけるICORPの活動の重要性が述べられた。続いて当センター長の土岐憲三より、京都におけるこれまでの文化財防災への取り組みと、次世代へ新たな文化を遺すことを目的としたプラットフォームの設立が紹介された。また、ユネスコ・ニューデリーの千葉茂恵氏からは途上国における危機管理防災の実施にあたっての問題点、ユネスコを含めた支援する国際機関における課題が述べられた。その後、ユネスコチェアーホルダーである本学の益田兼房教授より9月13日より2週間にわたって開催された国際研修2010の成果報告が行われた。

パネル・ディスカッションは益田兼房教授を司会とし、パネリストであるロヒト・ジグヤス氏(ICORP会長)、邱上嘉教授(国立雲林科学技術大学前副学長)、砂原秀輝氏(教王護国寺総務部長)、スー・コール氏(ICORP副会長)が、それぞれの立場から文化遺産防災への取り組みを報告した。それを受けた参加者との間で、文化遺産保護におけるコミュニティとの結束、文化遺産の状況にあわせた危機管理計画の策定、専門家間での情報共有の必要性が議論された。

最後に、益田兼房教授より今後ICORPが世界的な大災害に備えて担う役割、およびその活動を支える文化遺産防災の国際的情報交換WEB網の設立について、参加者への協力が呼びかけられ、本会議は終了した。

 

2010-09-13ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修2010

2010年9月13日(月)から9月26日(日)までの2週間、ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修2010を、京都市、神戸市および篠山市で開催した。この国際研修は今年で5年目を迎える。研修者は、ユネスコ世界遺産委員会、イクロム(ICCROM)、アジアン・アカデミー等の協力を得て国際公募で募集した。本年は、世界31カ国から79名の応募があった。この中からイクロムと協議し選抜したのが、ブータン、パラオ、ペルー、セルビア、トルコの5カ国11名の研修者である。今年の研修では、長期的な視点に立った防災と災害復旧をテーマに、実効性の高い計画案作成を目指した。

研修者はまず、土岐憲三教授(立命館大学歴史都市防災研究センター・センター長)による「地震工学と文化遺産防災計画」の講義で文化遺産危機管理の課題を把握し、次に、ロヒト・ジグヤス教授による「災害危機管理の重要性」でリスク分析、また、「リスク評価のための総合的方法論への導入」、伊津野和行教授による「日本の伝統的建造物の地震時の挙動予測」、古川愛子先生(京都大学)による「組積造建造物の地震時の挙動予測」でリスク評価の学術的成果を学んだ。京都市消防局防災危機管理室からは「京都市地域防災計画における文化財の防災対策について」講義をいただき、とくに日本の自助・共助・公助の考え方は、研修者に強い印象を与えた。また、村上裕道氏(兵庫県教育委員会)による「阪神淡路大震災の経験」「ヘリテージマネージャーの養成」、梅津章子氏(文化庁調査官)による「日本の文化財保護総合施策と防災」等の講義を受け、日本の経験と先進的な取り組みを示した。これらは、「世界遺産清水寺(京都府文化財保護課)」、「産寧坂重要伝統的建造物群保存地区および清水寺周辺地域(大窪健之教授)」、「世界遺産仁和寺防災設備(文化財防災施設計画事務所・大森彦一所長)」、「篠山重要伝統的建造物群保存地区の修理修景事業(篠山市教育委員会、兵庫ヘリテージマネージャー)」の見学や、ロヒト・ジグヤス教授・大窪健之教授による、文化遺産のコア(清水寺)およびバッファー(産寧坂重要伝統的建造物群保存地区)をフィールドとした歴史都市のリスク分析演習、「災害危機シナリオ作成と危機レベルの評価演習」等のワークショップを通して、段階を追って理解を深めていった。

本年は、「文化遺産と歴史都市の地震後の復旧のための国際協力・インドネシアの事例」「災害後の文化遺産の被害の評価・ペルーの事例」「カトマンズの谷の災害危機管理」「崇礼門(南大門)火災後の韓国の動向」「災害後の復旧と文化遺産保護の課題・台湾の事例」「1954ハーグ条約・議定書とブルーシールド」等豊富な事例を示すことができ、これらを踏まえて各国ごとに立案した文化遺産危機管理計画案は、ユネスコ、イコモス、イクロムをはじめとする専門家から高い評価を受けた。

 

2010-07-16第36回京都歴史災害研究会

神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員の高野宏康氏による「関東大震災後の復興小学校と防災意識ー災害文化をめぐる東西比較研究の視点からの考察ー」と題する発表が行われた。東京には、関東大震災で倒壊・焼失し、再建されたいわゆる「復校小学校」といが現在まで19校が残されており、現在その保存が問題となっている。「復校小学校」が震災の経験を継承し、防災の拠点となっている事実を、京都の「番組小学校」との比較を通して明らかにした。

2010-07-03第二回文化遺産防災アイデアコンペティション

2010年7月3日(土)に立命館大学衣笠キャンパスにおいて、第二回文化遺産防災アイデアコンペティションの第2次審査会と表彰式が実施されました。全国から43作品の応募をいただき、その中から選抜された7作品に対して公開講評会が行われ、その後の審査員による協議を経て、特別賞を含む計10作品に対して表彰が行われました。表彰の対象作品は下記の通りです。応募者の皆様および会場にご参加いただきました皆様のご協力に感謝を申しあげます。

2010-07-03第4回歴史都市防災シンポジウム

立命館大学衣笠キャンパスにて、第4回歴史都市防災シンポジウムを開催しました。歴史都市や文化遺産の防災に関する45件の研究発表と活発な討議が行われました。全国から200人以上の参加があり、歴史都市防災に関する関心の高さがうかがえました。来年度(2011年度)も7月頃にシンポジウムを開催する予定です。
なお、シンポジウムで発表された研究成果については「歴史都市防災論文集Vol.4」として刊行しております。

 
2010-06-04第35回京都歴史災害研究会

(財)向日市埋蔵文化財センターの中塚良氏による「治水と自然景観の歴史ー京都盆地の遺跡調査成果からー」と題する発表があった。天井川や堤防などの遺跡調査の結果から、そこから展望される過去の治水や自然景観を復元し、「治水の景観考古学」的な意義があることを強調された。さらに、研究結果をビジュアルに表現することで、これまでの成果を再検討できるのではないかという提案がされた。

2010-05-08G-COE定例研究会

歴史都市防災研究センターにて定例研究会が開催され、32人が参加した。各プロジェクトグループ(PG)から1人ずつ発表があり、脆弱性PGから山﨑正史理工学部教授「中国四川省シーチャン鎮の町並災害復興と川劇(せんげき)の保存」、歴史災害PGから岡田篤正R-GIRO教授「活断層詳細図と自然災害図・文化財重要施設分布図との重合図の試作に向けて」、防災技術PGから須田達R-GIRO准教授「重要伝統的建造物群保存地区の与謝野町加悦における防災力向上に関する取り組み」、防災計画PGから崔 青林PD「防災のための歴史都市モデリングおよびシミュレーション分析に向けて」であった。地域防災力や住民意識が向上することと、実際の被害軽減との関連など、さかんな議論があった。

2010-03-11第7回国際共同ワークショップ

衣笠キャンパスにおいて、第7回国際共同ワークショップ「都市開発の政策的変遷と京都市における歴史・文化地域の保全」を開催した。タイ王国国立タマサート大学からChaweewan Denpaiboon准教授とともに院生・学部生ら約30人が来日し、政策科学部の鐘ヶ江教授らと立命館大学の院生・学部生とが共同でワークショップを行った。都市保全・建設環境・都市空間・近所とコミュニティの問題や、歴史文化の保全に影響を与えるものとしての災害について等、フィールドワークや討議を通して勉強した。

2010-03-06外部評価の実施

グローバルCOEとして前半2年の終了にあたり、外部評価委員の方々にこれまでの拠点活動を評価していただいた。立命館大学朱雀キャンパスにおいて開催された評価委員会において、室﨑益輝氏(関西学院大学総合政策学部教授)、辻篤子氏(朝日新聞論説委員、森孝忍氏(清水寺法務部長)、鶴岡典慶氏(京都府教育委員会文化財保護課)、奥山脩二氏(元・京都市消防局理事)から、ご意見を伺った。評価結果を基に今後三年間の活動方針を見直し、よりよい成果が得られるよう努力していきたい。

2010-02-19歴史災害セミナー

今回は、文化遺産防災にとっても影響の大きな断層に焦点を絞って、大きな研究成果をあげておられる二人に講演をお願いした。
まず、「理学系の地震学の視点から見た断層近傍のリスク」と題して、京都大学防災研究所教授の川崎一朗氏から、断層の近くには多くの貴重な文化遺産があり、1g近い上下動を想定した耐震補強が必要であることなどがとりあげられた。次に、立命館大学歴史都市防災研究センター教授の岡田篤正氏から、「韓国の活断層と歴史地震」と題する講演があった。韓国の南東部には、明瞭な活断層があり、歴史時代の地震活動はそう活発ではないにせよ、発生したことを明らかにされた。いずれも、文化遺産との関わりを考える必要のあることに触れられていた。

2010-01-29第34回京都歴史災害研究会

奈良大学文学部の鎌田道隆教授による「元治元年のどんどん焼けと市民生活」と題する発表があった。京都では、幕末に政情が不安定になることで蛤御門の変(元治元年、1864年)が発生した。これに伴って、「どんどん焼け」と呼ばれている元治元年の大火があった。発表では、この大火をいくつかの史料を用いて、火災の状態、市民の対応などを明らかにした。

2010-01-19G-COE定例研究会(現地見学会)

2009年度の第5回定例研究会として、清水寺およびその周辺地域の防災に立命館大学が関わってきた実績等の見学会を行った。まず、清水寺の消火放水施設を見せていただいた後、本堂床下に設置している地震計の状況と、裏山における斜面計測の状況を、伊津野教授と深川教授より説明した。本堂下の懸け造り部分の柱脚部を見た後、子安の塔の改修工事現場を見学し、さらに、京都市が清水寺境内に建設している1500トンの防火貯水槽の工事現場を見学した。吉越教授による被災史の説明や、小川准教授による災害時交通の話を聞いた後、門前町の消火栓整備状況を大窪教授の案内で見て回り、地下に防火貯水槽が設置されている防災公園(高台寺公園)で解散した。

2009-11-25第33回京都歴史災害研究会

関西野生生物研究所の川道美枝子先生から、「文化財に迫る危機:外来生物アライグマ」と題する発表があった。外来生物であるアライグマは、文化財を破壊するだけでなく病気の媒介でも、在来の生態系を破壊することなど多くの問題を引き起こしている。アライグマの生態的な特徴だけでなく、多くの文化財への被害の実例を紹介していただいた。文化遺産の防災を研究する場合、自然災害、人為災害の他に、獣害も加える必要性を講演から知ることができた。

 

2009-11-21G-COE定例研究会

2009年度の第4回定例研究会では、国際活動や教育活動の報告を行った。ユネスコチェア国際研修やフォーラム・ユネスコ等の報告、タイ、イタリア、ペルー、ベトナム、ネパール、韓国などとの研究連携や共同プロジェクトについて説明があった。教育プログラムの実習に関しても成果が報告され、今後さらに展開していくことが確認された。文化遺産の防災対策パッケージについてもWeb版の試作が行われていることの紹介があり、熱心な議論が行われた。

2009-10-17G-COE定例研究会

する講演会を実施した。

  1. カトマンズの歴史的建造物の構造調査 -その1 弾性波トモグラフィー-
    清野純史(京都大学大学院工学研究科教授 兼 立命館大学特別招聘教授)
  2. 文化遺産の震災復興:ジョグジャカルタの経験から
    イカプトラ(インドネシア・ガジャマダ大学建築計画学部准教授)
  3. カトマンズにおける文化遺産とリスク管理
    ジシュヌ・スベディ(ネパール・トリブヴァン大学工学研究所准教授)
  4. カトマンズの地盤構造
    バンダリ・ネトラ・プラカシュ(愛媛大学大学院工学研究科助教)

の4題である。歴史都市防災研究センターにおいて開催され、約30名の参加があった。次回は11月21日(土)の予定である。

2009-10-15歴史都市防災シンポジウム「世界の復興・保存事例から」

よみうり神戸ホールにおいて、主催:国際連合地域開発センター(UNCRD)防災計画兵庫事務所、共催:立命館大学と国際連合国際防災戦略兵庫事務所によるシンポジウムが開催された。立命館大学側からは、土岐憲三教授の基調講演「文化遺産の防災-過去、現在、未来-」と、大窪健之教授「立命館大学GCOE『文化遺産防災学』への取り組み-清水周辺地域での京都市防災水利整備事業から-」の報告があった。その他ネパール、インドネシア、中国からの報告があり、聴衆者は熱心に聞き入っていた。また、谷口仁士教授がパネリストとして参加したパネルディスカッションでは、防災と文化遺産保護の両立をめざして、これからの歴史都市の防災について幅広い討論が行われた。

2009-09-28第32回京都歴史災害研究会

立命館グローバル・イノベーション研究機構の北原糸子教授より、『歴史災害からの防災教訓―防災技術・対策の「パッケージ化」の試み』と題する講演があった。1847年の善光寺地震、1923年の関東大震災を事例に、史料の所在・アプローチの方法・防災の知恵の抽出などに関する検討結果が紹介された。また、史資料を単に検討するだけでなく、そこにどのような考え方で望むのかという「哲学」が必要であることを強調された。なお、今回の講演終了後、GCOEの実施にかかわる貴重な議論も行われた。

2009-08-31ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修2009

8月30日(日)から9月12日(土)までの2週間、ユネスコ・チェア「文化遺産と危機管理」国際研修2009を開催した。この国際研修は、今年で4年目を迎え、京都とネパールの世界遺産カトマンズ峡谷の歴史都市パタンにて1週間ずつ行なった。研修者は、ユネスコ世界遺産委員会、イクロム(ICCROM)、アジアン・アカデミー等の協力を得て国際公募を実施し、本年は世界28カ国から61名の応募があった。この中からイクロムと協議し選抜したのが、中国、ネパール、ジャマイカ、モルドバの4カ国8名の研修者である。

今年の研修では、歴史都市の地震災害に焦点をおき、さらにフィールドに密着した実効性の高い計画案作成を目指した。前半の京都では、まず国際専門家会議『地震帯における世界文化遺産の持続可能な保護』を受けて、文化遺産の危機管理に関する世界的な状況把握を行なった。

続いて、益田兼房教授とロヒト・ジグヤス教授による「文化遺産の定義と災害危機管理の重要性」に関する講義、京都府文化財保護課のご協力のもとに「世界遺産清水寺の見学」、その「リスクを分析する演習」、大窪健之教授による「産寧坂重要伝統的建造物群保存地区等清水寺周辺地域をフィールドとしたDIG」、大森彦一氏(文化財防災施設計画事務所)による「世界遺産仁和寺の防災設備見学」を行なった。

さらに、ジョルジョ・クローチ教授(ローマサピエンサ大学・イクロム)による「伝統的建造物における構造補強に関するヨーロッパのトレンド」、伊津野和行教授による「日本の伝統的木造建築における耐震性評価」、村上裕道氏(兵庫県教育委員会)による「阪神淡路大震災の経験」、下間久美子氏(文化庁調査官)による「歴史都市の防災に関する日本の政策」等の講義を受け、「災害危機シナリオの把握」、「災害評価と復旧の優先順位」等に関する演習を行ない、木造文化圏である日本の経験と先進的な取り組みを示した。後半のカトマンズでは、立命館大学グローバルCOEプログラムの提携機関である、トリブバン大学IoEの都市史専門家であるティワリ教授による「世界遺産カトマンズ峡谷の建築と保存の歴史」の講義と歴史都市パタンの視察、構造の専門家であるマスキー教授による「カトマンズ渓谷の文化遺産に対する構造解析と耐震補強」等の講義と、現地の伝統的組積造家屋を対象にその脆弱性と減災対策を調べる調査演習を行った。伝統的組積造家屋が立ち並ぶA地点からB地点へ移動し、その地震時の危険性を予測する演習、1934年大地震で被災した王宮を再利用したパタンミュージアムでの緊急時シミュレーション演習等、フィールドに密着した演習を多く取り入れ、現地に即したより実践的な計画案の立案手法を学ぶものとした。

これを踏まえ、各国ごとに文化遺産危機管理計画案を立案し、各研修者が自国に帰って取り組むべきパイロット・プランまで提示することを求めた。この成果は、国際研修最終日の9月12日(土)にヒマラヤホテル会議室にて開催した『カトマンズ・フォーラム:持続可能な文化遺産危機管理のための保存と開発』において、地震帯における文化遺産防災計画案の事例として公表した。このフォーラムには、谷口仁士教授、大窪健之教授、益田兼房教授、ジョセフ・キング氏(イクロム)、マスキー教授(トリブバン大学、ネパール)、コリン・カイザー氏(ユネスコ・カトマンズ事務所長)等の発表と討議が行われ、「地震帯における世界文化遺産の持続可能な保護に関する京都・カトマンズ勧告」を採択した。

勧告文の詳細は、こちらをご覧ください。
【Kyoto-Kathmandu Recommendation on Sustainable Protection of World Cultural Heritage in Earthquake Zones】

 

2009-08-30立命館大学・日本イコモス国内委員会 国際専門家会議「地震帯における世界文化遺産の持続可能な保護」開催

当センターのカンファレンスホールにて立命館大学・日本イコモス国内委員会 国際専門家会議「地震帯における世界文化遺産の持続可能な保護」を開催した。今回の会議は、京都をはじめ世界各地の地震帯上にある世界文化遺産の持続可能な保護のために必要な対策は何かを考える場として設けられたものである。特に今回は世界文化遺産保護に携わっているユネスコ・イコモス・イクロムの国際専門家らが集まり、世界文化遺産を守るための危機管理計画の必要性などについて検討し、その結果を京都の市民府民と共有するとともに、世界にメッセージを発することがその目的であった。本会議は、立命館大学・歴史都市防災研究センター・日本イコモス国内委員会の主催で、外務省・文化庁・京都府・京都府教育委員会・京都市の後援を頂いて行った。また、文部科学省グローバルCOEプログラム 立命館大学「歴史都市を守る『文化遺産防災学』推進拠点」の一環として実施された。 会議の開催にあたり、本学の益田兼房教授より会議の目的や趣旨に関する説明があり、その後、講演およびパネル・ディスカッションが続いた。まず、当センターの土岐憲三センター長から「京都の世界文化遺産の危機管理状況と展望」という題名で講演が行われた。次に本学のロヒト・ジグヤス教授は、歴史都市防災研究センターの国際的な活動に関する紹介とカトマンズにおける世界文化遺産の周辺都市環境の変容過程における危機や地震災害から文化遺産を守る危機管理の必要性について言及した。また、京都大学の清野純史教授は、「歴史的建造物の保存に関する研究:バムとカトマンズの事例調査」と題する講演の中で、組積造建造物の地震による被害に関する報告と現在進行中のカトマンズプロジェクトにおける構造解析について紹介した。さらに、ジョバンニ・ボッカルディ氏(ユネスコ世界遺産センターのアジア太平洋地域チーフ)を司会とし、ジョルジョ・クローチ氏(ローマサピエンサ大学教授・イクロム)、グスタヴォ・アローズ氏(イコモス会長)、ミカエル・ターナー氏(世界遺産委員会イスラエル代表)、土岐憲三教授によるパネル・ディスカッションが行われ、災害が価値観の変化に及ぼす影響、新技術とオーセンティシティの問題、防災の取り組みとコミュニティの結束について議論された。その議論の結果をふまえた上で、最後に「地震帯における世界文化遺産の持続可能な保護に関する京都宣言」を採択した。本会議には、国際研修者8名と文化庁・京都府・京都府教育委員会・京都市などの専門家や宗教界の関係者、一般市民など50名余りのご来場があった。

2009-07-18G-COE定例研究会

2009年度の第2回定例研究会を開催した。各プロジェクトグループから1名ずつ4名の発表があり、31名の参加があった。まず、脆弱性グループから、ロヒト・ジグヤス客員教授の「Analyzing traditional knowledge for reducing earthquake vulnerability」と題した発表があり、インドの地震被害をふまえた伝統的建造物の脆弱性について説明があった。続いて歴史災害グループから、谷端郷氏「1938年阪神大水害時の六甲山南麓における被災とその要因分析」の発表があり、被害を受けた地理的要因等について説明された。防災技術グループからは大岡優氏「山麓斜面に建立された寺院(清水寺本堂)の耐震性能評価」の発表があり、経年劣化や地震応答について説明があった。最後に防災計画グループから大窪健之教授の「地震火災から歴史都市を守る環境防災水利:清水周辺整備事業の現状と全市的な整備指針の提案」の発表があった。京都市とも共同で進めてきた防災水利の研究について、概要の説明があった。次回は10月17日(土)の予定である。

2009-06-20第一回文化遺産防災アイデアコンペティション

文化遺産を災害から守るための学際的な研究活動の一環として歴史都市防災研究センターが主催する「第一回文化遺産防災アイデアコンペティション」を実施しました。全国から68作品の応募をいただき、その中から選抜された7作品に対して公開講評会が行われ、その後の審査員による協議を経て、特別賞を含む計10作品に対して表彰が行われました。表彰の対象作品の紹介など、結果の詳細はこちらのホームページをご確認ください。

http://www.bunkaisan-competition.jp/2009/

2009-06-20第3回歴史都市防災シンポジウム

東本願寺のご協力を得て、第3回歴史都市防災シンポジウムを開催しました。全国から集まった歴史都市や文化遺産の防災に関する41件の研究発表と活発な討議が行われました。一般の方も含めて200人以上の参加があり、歴史都市防災に関する関心の高さがうかがえました。来年度(2010年度)も6月頃にシンポジウムを開催する予定です。

なお、シンポジウムで発表された研究成果については「歴史都市防災論文集 Vol.3」として刊行しております。

大学ホームページはこちら  http://www.ritsumei.jp/pickup/detail_j/topics/3715/date/6/year/2009

2009-05-13第31回京都歴史災害研究会

滋賀県立大学人間文化学部教授の京樂真帆子氏より、「平安京のくらしと火災」と題する発表があった。火災の史料をみることで、平安京の人々がそれをどう考えているのかという観点から報告された。その結果、平安貴族は消火には無関心であることが明らかにされたが、その理由として当時の人々に公共性という概念がなかったことと、都市の支配権力としては未熟であったことなどがあるということに触れられた。

2009-04-25企画展示記念講演会「関東大震災を検証する-救援・復興・防災-」

創思館カンファレンスルームにおいて、表題の講演会を開催した。これは、4月8日~5月10日に歴史都市防災研究センターにおいて開催されている「地図を通して見る関東大震災」展を記念して行われた講演会で、鹿島建設小堀研究室プリンシプル・リサーチャーの武村雅之氏、東京大学大学院准教授の鈴木淳氏、防災アンド都市づくり計画室代表・首都大学東京客員教授の吉川仁氏の3名によって、最近の研究の成果を紹介されたものであった。終了後、講演された3名ほか、展示の企画担当者による展示案内があった。講演会・展示案内ともに熱心な多くの参加者によって、質疑が交わされた。

 

2009-04-18G-COE定例研究会

2009年度は毎月第3土曜日にG-COE関連行事を開催することになり、4月は第1回定例研究会を開催した。各プロジェクトグループから1名ずつ4名の発表があり、39名の参加があった。発表者とタイトルは以下の通り。脆弱性PG「京都市における近代近世未指定文化財寺社建築調査中間報告」中村琢巳(日本学術振興会特別研究員)、歴史災害PG「13世紀平安京における火災発生地域の復原-GISを用いた都市空間構造の分析-」塚本章宏(日本学術振興会特別研究員)、防災技術PG「降雨時の重要文化財後背斜面を対象とした防災システムの構築」里見知昭(日本学術振興会特別研究員)、計画と政策PG「文化遺産防災に対する社会的着目度と観光資源としての文化遺産の評価」小川圭一(理工学部都市システム工学科准教授)。

2009-02-16カトマンズ・シンポジウム 「地震から世界遺産と歴史的都市環境をどう守るか」国際専門家会議

カトマンズ・シンポジウム「地震から世界遺産と歴史的都市環境をどう守るか」国際専門家会議は、2009年2月16日~19日、ネパール連邦民主共和国にある世界文化遺産カトマンズ渓谷の旧都パタンにて開催された。(主催:立命館大学歴史都市防災研究センター、共催:ユネスコ・カトマンズ事務所、国立トリブバン大学工学研究科、後援:在ネパール日本国大使館)
世界10カ国から参加した文化遺産保存、または地震工学の専門家たちは、この会議での提言を履行し、ネパールおよびカトマンズ渓谷の遺産関連機関、UNESCO、世界遺産委員会、ICOMOS、ICCROM、ICBS、ISDR、UNDPだけでなく、地震災害リスクに脅かされている文化遺産の管理強化に地域、国、国際社会のレベルで携わるすべての個人や組織に対し、提言を伝えて行くことの努力の重要性について合意し、カトマンズ勧告(The Kathmandu Symposium Recommendations on Protecting World Heritage Properties and their Historic Urban Environment from Earthquakes)を採択した。

 

2008-12-19第30回京都歴史災害研究会

東京文化財研究所文化遺産国際協力センター主任研究員の二神葉子氏より、「文化財防災へのGISデータベースの活用―イタリアの『文化財危険地図』を中心に―」と題する発表があった。ヨーロッパ諸国は、文化財のGISデータベース化が進んでいるが、中でも高いレベルにあるイタリアの『文化財危険地図』を例に、作成の背景や内容に踏み込んで紹介があった。また、日本で取り組んでいるGISデータベースについても触れ、この分野の重要性を述べられた。

2008-11-17第29回京都歴史災害研究会

滋賀県立大学教授の水野章二氏より、「中世の災害-水害への対応を中心に-」と題する発表があった。まず、古代・中世史には、災害史というジャンルが存在せず、災害は荘園史・開発史・都市史などの中で扱われてきたことに触れ、中世の災害観が天の譴責や神仏の祟りにあることを述べた。
その上で、中世の災害の事例を畿内や関東のいくつかの史料を用いて明らかにし、災害にどのように対応してきたかを、宗教的・工学的・農学的・社会的に4タイプに分類して、明らかにされた。

2008-11-17歴史まちづくり法施行記念国際シンポジウム 「地震帯にある世界文化遺産の危機管理をどう進めるか」

国連大学ウ・タントホール(東京・青山)のにて「歴史まちづくり法施行記念国際シンポジウム『地震帯にある世界文化遺産の危機管理をどう進めるか』」を開催した。本シンポジウムは世界各地から集まった専門家から危機的状況の報告を受け、政府や大学がユネスコとともにできる取り組みについて探ることを目的とした。シンポジウムは、第Ⅰ部の事例報告、第Ⅱ部のパネル・ディスカッションを通じて文化遺産をめぐる危機的状況の報告と危機管理計画の発表、政府や大学の役割などについて議論が行われた。それを受け、第Ⅲ部で「世界文化遺産を地震災害からまもる東京宣言(Tokyo Declaration for the Protection of World Cultural Heritage from Seismic Disasters)」が採択された。当日は専門家をはじめ大学生、一般市民など150名余りのご来場があった。本シンポジウムは日本国内に文化遺産保存と危機管理の重要性をアピールするとともに、ユネスコ世界遺産センターの担当者やユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修に参加するために来日していた招聘研修者にも日本の政府や大学の活動を紹介し、先進的な例として高い評価を得た。また、本シンポジウムは、NHK教育テレビ日曜フォーラムで1月下旬に放映される予定である。

2008-11-14文化遺産防災国際フォーラム2008

ホテルグランヴィア京都の古今の間にて「文化遺産防災国際フォーラム2008」を開催した。第Ⅰ部「世界遺産『古都京都の文化財』保存とフォーラムユネスコ・ヘリテージ&ユニバーシティ」では、歴史都市防災研究センターの土岐憲三センター長の講演「世界遺産『古都京都の文化財』保護のため、大学は何をすべきか」と、ユネスコ世界遺産センターからマリエル・リション企画専門官の特別講演「フォーラムユネスコ・ヘリテージ&ユニバーシティ・プログラムによる世界遺産保護」が行われ、日向進教授(京都工芸繊維大学)、仲隆裕教授(京都造形芸術大学)、山﨑正史教授(立命館大学)、益田兼房教授(立命館大学)により「世界遺産の持続可能な保護のための大学の役割」というテーマでパネル・ディスカッションが行われた。第Ⅱ部では、本学が主催している「ユネスコチェア・プログラム『文化遺産と危機管理』国際研修2008」に参加した招聘研修者(ネパール・セルビア・ブータン、イラン、台湾)9名に修了証書を交付するとともに約2週間の成果について発表を行った。

2008-11-03ユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修2008

2008年11月、約2週間にわたって、当センターにてユネスコチェア「文化遺産と危機管理」国際研修2008を開催した。今年で3年目を迎える本研修には、世界11カ国から32名の応募があり、ICCROMとの協議を経て、ネパール・セルビア・ブータン・イランから7名、オブザーバー参加として台湾から2名の計9名を招聘した。文化遺産保存と防災対策に関する講義(Lectures)及び事例見学会(Site Visits)、清水寺と産寧坂周辺をフィールドとする脆弱性把握・緊急時対応などのワークショップ(Workshop)を行い、その内容をふまえた上で研修の最後にチームプロジェクト(Team Projects)として各国ごとに自国の文化遺産における防災計画案を作成した。この成果については、11月14日(金)「文化遺産防災国際フォーラム2008」(ホテルグランヴィア京都)にて発表を行ない、土岐憲三センター長から研修者全員に修了証を交付した。この国際研修の模様は、ユネスコ世界遺産センターHP<Reducing Disaster Risks at World Heritage Properties―Technical workshops and resource material>に取り上げられ、国連防災世界会議(2005)とともに我々の活動が紹介されている。

http://whc.unesco.org/en/disaster-risk-reduction#workshops

2008-10-04第2回歴史都市防災シンポジウム

2008年10月4日(土)に、衣笠キャンパス志学館において、第2回歴史都市防災シンポジウムを開催しました。歴史都市や文化遺産の防災に関する25件の研究発表がおこなわれ、活発な討議がおこなわれました。また全体討論会では、本拠点の活動成果となる「文化遺産災害対策パッケージ」のあり方について、大窪拠点リーダー、各プロジェクトグループおよび教育検討委員会の代表によるパネルディスカッションがおこなわれ、文化遺産災害対策パッケージの枠組みや内容についての議論がおこなわれました。学内外から64名の参加者があり、歴史都市防災に関する関心の高さがうかがえました。

なお、シンポジウムで発表された研究成果については「歴史都市防災論文集 Vol.2」として刊行しております。

 

2008-08-23キックオフミーティング

2008年8月23日(土)に、衣笠キャンパス創思館において、グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る『文化遺産防災学』推進拠点」キックオフミー ティングを開催しました。川口総長の挨拶、大窪拠点リーダーの挨拶とプログラムの紹介の後、中川武・早稲田大学教授より「アンコール遺跡救済のための国際 協力と日本の役割」と題した講演をいただき、文化遺産保護における国際協力の重要性や本拠点の活動に対する期待のコメントをいただきました。その後、各プ ロジェクトグループおよび国際連携委員会の活動計画と、文化遺産防災を取り巻く国内外の動向についての講演をおこないました。最後に、室崎益輝・関西学院 大学教授より、本拠点の今後の活動に対する期待や要望のコメントをいただきました。

2007-10-01第28回京都歴史災害研究会

京都市歴史資料館の伊東宗裕氏より「大塚コレクションの火災図について」と題する発表があった。
故大塚隆氏の地図コレクションは、京都にかかわる地図としては第一級のもので、2001年に京都大学と京都市に寄贈された。本発表では、京都市(京都市歴史資料館)に寄贈された地図のうち火災図に焦点を絞り、デジタル化された地図とともにその特徴についても紹介された。近世初期のものは、既成の地図に被災域を書き入れたものであったが、後期になるとかわら版になり、さらに彩色がほどこされたものに変わっていった。後期のかわら版は、かなりの枚数が刊行され、恐らく知人に消息を伝えたり、土産用につくられたものではないかとする考えなどが示された。

2007-07-02第27回京都歴史災害研究会

関西大学経済学部の浜野潔教授より、「災害と復興の人口史-元治大火と京都町人―」と題する研究発表が行われた。
まず、元治大火(蛤御門の変)の復興住宅である「お救い長屋」と考えられる住宅が、中京区に現存していることが紹介された後、元治大火の焼失区域など被害状況が示された。大火からの復興は比較的早く行われたが、衣棚北町・衣棚南町・西堂町を事例に、大火前後の人口の変化やもとの場所に戻った人々の特徴などについて、史料などをもとに明らかにされた。

2007-06-23第1回歴史都市防災シンポジウム

衣笠キャンパスにおいて、第1回歴史都市防災シンポジウムを開催した。全国の研究者から投稿された49編の論文発表が行われ、200人以上の参加者があった。論文発表会の後、京都大学防災研究所の鈴木祥之教授による「伝統建築物を地震災害から守る」と題した特別講演会が行われた。兵庫県三木市にある世界最大の震動台施設を用いた京町家の振動実験の様子を始め、伝統木造建築物の耐震性評価や耐震補強について、詳細な説明があった。

なお、シンポジウムで発表された研究成果については「歴史都市防災論文集 Vol.1」として刊行しております。

2007-03-13第4回国際共同研究シンポジウム

びわこ・くさつキャンパスにおいて、台湾国立成功大学との第4回国際共同研究シンポジウムを開催した。台湾より、李泳龍副教授(長栄大学)、夏皓清博士班研究生(国立成功大学)の2名が来日し,歴史都市の防災計画,交通計画に関する研究発表がおこなわれた。また、本学からは塚口博司教授(理工学部)、小川圭一講師(理工学部)より防災計画や交通計画に関する研究発表がおこなわれ、相互に活発な意見交換をおこなった。シンポジウムには、本学の教員・学生などを中心に約20名の出席があった。

2007-03-12第26回京都歴史災害研究会

当センターの岡田篤正特別招聘教授から「京都盆地における活断層調査―最新成果の紹介を兼ねて―」、京都大学大学院理学研究科博士後期課程院生の土志田正二氏から「京都盆地における地下構造の三次元解析」という2題の講演があった。京都盆地の地下構造や活断層について、物理探査やトレンチ調査によって得られた最新の知見が紹介された。

2006-12-19第2回文化遺産防災シンポジウム

創思館カンファレンスルームを会場として、当センター主催により、「文化遺産の防災-防災まち(地域)づくりを目指して-」と題するシンポジウムが開催された。

政策・法律・福祉・建築などの分野から防災まち(地域)づくりに関する5件(6名)の講演(本学政策科学部・鐘ヶ江秀彦教授、本学COE推進機構・大窪健之客員教授(京都大学)、京都市春日住民福祉協議会・高瀬博章氏、本学法学部・安本典夫教授、本学理工学部・小澤雄樹講師および滋賀県立大学・山本直彦講師)が行われた。
まち(地域)づくりは、様々な観点から実施されなければならないが、防災は最も重要なものになることが、豊富な事例などを用いながら示された。

2006-12-14第1回人為的災害からの防御に関する研究会現地見学会

建造物を中心とした文化遺産の被災や防御対策について、その実態をみて管理者からその説明を聞くことを目的とした見学会を実施した。今回、実施したのは愛知県西尾市および吉良町であるが、そこを選んだ理由は、この地域は愛知県の中でも文化遺産集中していて、近い将来に東海、東南海地震の発生が予測されているところであるためである。

今回の見学会で案内をされたのは、全体のコーディネイトは名古屋工業大学の谷口教授と防災ボランティア会議の牧野氏であり、西尾市については教育委員会文化振興課長の松井氏、吉良町については町史編纂室の水村氏であり、各寺については各住職であった。

まず、西尾市の岩瀬文庫に行った。そこには東海地方の災害資料が多く残されており、それを見学した後、西尾市の文化財に関する説明を受けた。その後、国の重文でもある久麻久神社で防災工事の様子を見学し、実相寺で中世末に建立された釈迦堂を見学した。

午後は吉良町に移動し、文治2(1186)年の建立といわれる金蓮寺阿弥陀堂、吉良上野介にゆかりの蓮蔵寺、花岳寺を見学し、住職の話を聞いた。その後、吉良町役場に移動して、町長と文化遺産の管理などに関する意見の交換を行った。途中、NKH名古屋放送局の取材も受けた。地域や社寺などにそれぞれの事情はあるが、総じて文化遺産の維持管理に費用的な制約があることと、防災対策が遅れがちであることが共通の課題であることがわかった。

2006-11-26台日国際共同研究シンポジウム

台湾・成功大学において、国際連携共同研究室制度に基づくシンポジウムを開催した。
立命館大学から教員6名と学生4名が参加し、研究発表を行った。成功大学の李徳河教授、葉光毅教授をはじめ、近隣の大学からも多くの参加者があり盛況であった。今後とも、国際シンポジウムを続けるとともに、共同研究を実施していくことを確認した。

2006-11-20第25回京都歴史災害研究会

京都精華大学人文学部の小椋純一教授より「京都周辺の植生の変遷と水害」と題した講演があった。絵図や古い資料を解析したところ、昭和の初期までは比叡山など京都近郊の山地には高木の林が少なく、ハゲ山さえも珍しくなかったと考えられる。これには落ち葉さえも貴重な資源として利用してきた状況が影響している。その後、土砂災害の防止を目的とした山林保護等により、森林の木々が大きくなってきた。近年では、さらにマツ林が減少する一方で、シイ林が拡大しているとのことである。

第11回歴史都市防災セミナー・第4回見学会

姫路市国際交流センターにて、歴史都市防災セミナーを開催した。まず、石見利勝姫路市長による「世界遺産『姫路城』を核とした姫路市のまちづくり」と題した特別講演があった。共生のまちづくりということで、自然、歴史文化、人と人との3つの共生を目指したまちづくりについて話があった。

次に、姫路市の井上耕三氏の案内による姫路城防災監視室や姫路城天守閣の見学をはさんで、姫路市の森威和夫氏「姫路城周辺の景観形成への取り組みについて」、小林正治氏「姫路城の保存修理と計画中の大天守修理について」の講演があった。

2006-11-03文化遺産防災国際フォーラム「アジアの世界遺産を災害からどう守るか」

当センター主催の文化遺産危機管理国際研修2006(10月23日~11月3日)の一環として、一般公開プログラム「文化遺産防災国際フォーラム」がキャンパスプラザ京都4階第2講義室にて開催された。本学学長の長田豊臣氏、日本イコモス国内委員会委員長の前野まさる氏の挨拶の後、ユネスコ世界遺産センターのジョバンニ・ボッカルディ氏およびセンター長の土岐憲三教授の記念講演とパネルディスカッションが行われた。参加者は約100名で、国内外の文化財防災に関する取り組みに対して熱心に聞き入っていた。

2006-11-01COE国際シンポジウム・日台シンポジウム

 

台湾国国立成功大学の謝正倫教授、中央研究院(Academic Sinica)の戴義欽講師・郭志禹博士およびダルムシュタット工科大学・台湾国中央研究院客員教授のヒュッター教授(Prof.Hutter)を招聘し、本学びわこ・くさつキャンパスにおいて、2日間の国際シンポジウム(2nd Two Days Symposium on Mechanics of Sediment Transportation、Debris Flow、Land-slides、River-change and Assosiated Flood Hazards)を開催した。COE研究課題の「大規模洪水・土砂移動現象に関する研究」に焦点を当て、研究発表および研究討論を行った。本学および他大学から25名の参加を得て、それぞれの研究に関連した熱心な議論や今後の共同研究課題に関する研究打ち合わせが行われた。

なお、本シンポジウムは、21世紀COEプログラムの協賛のもと本学国際連携共同研究室制度予算および台湾国中央研究院共同研究予算に基づくシンポジウムである。

2006-10-01ユネスコチェア 文化遺産防災国際研修

立命館大学歴史都市防災研究センターに「ユネスコチェア」が設置された。ユネスコチェアは、主として先進国と開発途上国間の学術交流支援促進をはかる仕組みであり、本センターは文化遺産の防災(Cultural heritage and risk management)に関する分野での認定である。ユネスコからのアナウンスはこちら。

2006-08-29GIS Day in 関西 2006

GIS Day in 関西 2006が、当センターの主催、人文地理学会・地理情報システム学会・(社)日本地理学会の共催で、衣笠キャンパス創思館をメイン会場として開催された。今回のテーマは、「GISで支える地域の安全・安心」で、午前中に4件の発表と討論がおこなわれた。午後からは、会場を有心館に移し、3つの部屋にわけてGISの実習によって安全マップなどの作成をおこなった。この企画は、今年で5回目になるが、徐々に規模も大きくなり、行政・研究・教育の分野で定着しつつある。なお、この企画は「GIS専門技術者認定制度」の一環をなし、ポートフォリオ方式によって後日、資格を得ることが可能となるものである。

2006-08-28第10回歴史都市防災セミナー

本学COE推進機構酒井久和助教授により、2006年5月27日のインドネシア・ジャワ島中部地震の被害報告会があった。文化遺産としては、仏教のボロブドール遺跡(ほぼ無被害)と、ヒンドゥー教のプランバナン遺跡(大被害)の紹介があった。2006年7月17日に発生したジャワ島南西沖地震による津波被害や、2006年5月28日のメラピ火山の火砕流による被害の説明もあった。

2006-08-26立命館大学・神奈川大学21世紀COEプログラム ジョイントワークショップ

神奈川大学の21世紀COEプログラム(人類文化研究のための非文字資料の体系化)と共同で、横浜市西区みなとみらいクイーンズタワーAを会場として「歴史災害と都市-京都・東京を中心に-」をテーマに、ジョイントワークショップを開催した。プログラムは4部構成で、第一部で京都関係の河角龍典氏・片平博文氏・冷泉為人氏・鈴木栄樹氏・中谷友樹氏の発表があった。第二部・第三部は東京関係(一部それ以外も含む)の発表であった。第四部では、総合討論がおこなわれ、都市、文化財と景観、データと情報公開、防災についてフロアも含めて活発な議論が展開された。

今回のジョイントワークショップの主体は、人文・社会科学系の分野が中心であったが、神奈川大学が目指している体系の理解ができ、またフロアに集まった多くの研究者とも有意義な交流ができて、大きな成功を収めたといえる。年度末には、報告書を刊行する予定である。

2006-07-28第24回京都歴史災害研究会

本学文学部 高橋学教授より、「役に立たない防災マップ・帰宅支援マップ」と題する発表があった。

防災マップは、本来その土地の履歴などを反映させた上で作成しないと、役に立つものにはなり得ないとし、多くは「防災施設マップ」になっている実態があると指摘された。そこに記されている避難場所といえども、一つ一つについて検討してみるともともと危険な場所であり、適当でないケースがある。また最近市販されるようになった帰宅支援マップにも、道路閉塞の情報などが盛り込まれていないために、実際には役に立たないことが予想されるという。将来的には、道路幅、橋梁、土地の履歴、道路閉塞、リアルタイム情報提供などを盛り込んで、防災マップを作成すべきであることが強調された。

2006-06-29第23回京都歴史災害研究会

京都市歴史資料館の小林丈広氏より、「町式目から見た町衆の防災意識」と題する発表が行われた。

近世京都の町内会の規則である「町式目」には、防災(特に防火)に関する記述もあって、それを読むことで当時の防災意識が伺える。このような観点から、具体的な式目の内容が紹介されたが、中には大変興味深い規定も見られた。また、防災の制度とのかかわりも判明し、時代によって形態を変えながら推移していった。つまり享保期には常火消の廃止があり、安永期には請負消防となり、さらに明治期の学区消防へと変化していったことなどが伺えた。まさに「町式目」は、当時の防災意識を知ることのできる貴重な史料であることがわかった。

2006-06-23第3回防災・情報シンポジウム

防災システムリサーチセンターの主催、歴史都市防災研究センターの共催で、大阪・梅田スカイビルにおいて「地震災害と防災情報システム」と題したシンポジウムを開催した。京都大学防災研究所巨大災害研究センター・センター長・林春男教授「新潟県中越地震での成功に学ぶ災害対応におけるGISの活用法」、大阪ガスエンジニアリング株式会社・パイプライン事業部技術総括・小川安雄氏「大阪ガスの防災情報システム」、国土交通省近畿地方整備局企画部・足立敏之部長「近畿地方における防災・危機管理」の3題の講演があり、約180名の研究機関・官公庁・民間企業関係の参加があった。

2006-06-17 第9回歴史都市防災セミナー

歴史都市防災研究センターにて、第9回歴史都市防災セミナー「地震調査・耐震の技術に関する現状と課題」が開催され、約40名の参加があった。

まず、本学COE推進機構の酒井久和助教授より、「河川堤防の耐震性評価手法の現状と課題」と題した講演があり、阪神淡路大震災以前は設計に地震力が考慮されてこなかった河川堤防について、これまでの地震被害事例の紹介と、変形解析法による耐震性評価手法の提案があった。

次に、当センターの岡田篤正特別招聘教授より、「京都盆地の活断層と地下構造-まとめと最新の調査成果」と題した講演があり、京都盆地における活断層の概要と地下構造について、トレンチ調査や反射法地震探査の結果を含めて最新の情報が紹介された。

2006-05-19防災システム研究会セミナー

エポック立命21にて、COEが共催する2006年度第1回防災システム研究会セミナーが開催された。「構造物の地震防災対策・非破壊検査」をテーマに、京都大学防災研究所 地震災害研究部門の澤田純男教授より「石油タンクの地震時スロッシング防止対策」、本学理工学部の伊津野和行教授より「木造建造物の非破壊検査と地震応答解析」、本学理工学部の尼崎省二教授より「コンクリート構造物の非破壊検査手法」の3題の講演があった。

2006-05-10第22回京都歴史災害研究会

京都大学防災研究所の矢守克也助教授より、「〈生活防災〉の発想-防災心理学のアプローチ-」と題する発表があった。矢守氏がかかわっている防災活動や、防災ゲーム「クロスロード」の開発・実践例についての紹介があった。「クロスロード」は、リスク・コミュニケーションの手段として優れていて、防災について地域において共に考えるためには効果的であり、各自治体などで徐々に浸透しつつあるという。発表の中で、様々な事例を引きながら、防災心理学からのアプローチが防災研究に欠かせないことを指摘された。

2006-04-28第21回京都歴史災害研究会

本学文学部の山崎有恒助教授より、「近代日本の治水と政治」と題する発表があった。まず、近代以降の河川管理問題が政治的な動きと極めて深い関係にあることを示した上で、日本の近代化に伴う問題点を指摘した。その中で、先進国への道を急ぎすぎたために、河川の自然を失ったことなどを明らかにした。

2006-04-12歴史都市防災研究センター開館記念講演会

新しい歴史都市防災研究センターの開館を記念して、末川記念会館ホールにて開館記念講演会を開催した。清水寺貫主の森清範氏より、「文化遺産と防災」と題して講演があった。講演会の後、歴史都市防災研究センターへ移動し、ハザードマップの企画展示を見学した。

2006-03-16第20回京都歴史災害研究会

京都薬科大学の鈴木栄樹助教授より、「幕末期京都の火災と復興」と題する発表があった。嘉永7年(1854年)4月6日~7日におきた京都の大火と、その後の復興対応の様子が述べられた。ペリーの来航という対外的な危機の時代に発生した内裏の焼亡と造営について、詳細な資料に基づいて説明された。翌年11月には内裏が完成して還幸となり、造営工事が速かったことがうかがえる。

2006-03-15COE国際シンポジウム

ベネズエラ国ベネズエラ中央大学のロペツ教授(Prof.Lopez)、ファルコン教授(Prof.Falcon)、イタリア国サレルノ大学のパパ博士(Dr.Papa)、イタリア国ナポリ大学のマルチノ博士(Dr.Martino)およびスペイン国カタロニア・ポリテクノ大学のバテマン教授(Prof.Bateman)を招聘し、本学のびわこ・くさつキャンパスにおいて、2日間の国際シンポジウム(2nd TwoDays Symposium on Mechanics of Sediment Transportation, Debris Flow,Land-slides, River-change and Assosiated Flood Hazards)を開催した。

COE研究課題の「大規模洪水・土砂移動現象に関する研究」に焦点を当て、研究発表および研究討論を行った。本学、他大学および民間のコンサルタント会社から60名(うち、外国人25名)の参加を得て、それぞれの研究および業務に関連した熱心な議論が行われた。また、本シンポジウムは、COE国際ワーキンググループ予算および理工学部国際共同研究助成金の補助を受けて開催しており、ベネズエラ国とスペイン国においては、本学との大学院生の単位互換を含む交流に繋がる方策を考えることが確認された。

2006-03-14台日国際共同研究シンポジウム

台湾・成功大学において、国際連携共同研究室制度に基づくシンポジウムを開催した。立命館大学から教員5名と学生7名が参加し、研究発表を行った。成功大学の李徳河教授、葉光毅教授をはじめ、近隣の大学からも多くの参加者があり盛況であった。今後とも、国際シンポジウムを続けるとともに、共同研究を実施していくことを確認した。

2006-03-13文化遺産防災連絡会

構成メンバーの諸団体代表に加え、京都府教育庁指導部文化財保護課、京都市文化市民局文化部文化財保護課、京都市消防局の方々もオブザーバーとして参加。連絡会議の今後のあり方について参加各団体にアンケートを取った内容が紹介された。大災害が起きたとき、文化財レスキューについてどのように対応するかも課題となっており、そのためのワーキングをスタートさせる予定である。文化財のリストが整備されていない状態から、災害時に対応できるリストの充実も考える。

2006-01-20第19回京都歴史災害研究会

大阪大学大学院文学研究科の小林茂教授より、「近世災害史研究における情報と記録」と題する発表があった。近世の災害を研究するためには、災害の記録のされ方・情報の流通などをもとに、そこから災害をいかに再構成してとらえるかという「災害資料論」が必要であることを、琉球列島の疾病と島原の火山災害を例にとって述べられた。

2006-01-20第2回防災・情報シンポジウム

防災システムリサーチセンターと歴史都市防災研究センターの共催で「災害発生時の情報ネットワークシステム」と題したシンポジウムを開催した。(会場:キャンパスプラザ京都)名城大学理工学部・渡邊晃教授「災害発生時における緊急通信網の構築」、立命館大学情報理工学部・小川均教授「緊急地震速報と情報家電」、国土交通省近畿地方整備局企画部・中村則之防災対策官「災害時・緊急事態発生時における近畿地方整備局の取り組み」、立命館大学理工学部・塚口博司教授「京都市民の地震災害時の避難行動について」の4題の講演があり、約100名の官公庁・企業関係者等が参加した。

2005-12-19第8回歴史都市防災セミナー

「文化財の保存に関わる地盤工学的アプローチ」として、2題の講演があった。京都大学防災研究所の三村衛助教授からは、「地盤工学からみた高松塚古墳」と題して、高松塚古墳の構造、石室解体修復に至る経緯と地盤工学上の問題について説明があった。京都市立伏見工業高校の森本浩行教諭(立命館大学 COE客員研究員)からは、「城郭石垣の形状と構造-防災のための基礎的事項-」と題して、城郭石垣の歴史的変遷を数値的に評価する方法や、古文書に示された石垣設計法の数式化などについて説明があった。約40人が参加し、活発な質疑応答があった。

2005-12-14世界遺産保護国際セミナー

歴史都市防災研究センター等が主催して、キャンパスプラザ京都において「世界遺産保護国際セミナー」を開催した。14日一般公開プログラムでは、イコモス世界遺産アドバイザー・ユッカ・ヨキレット博士による特別講演「世界遺産保護の新しい課題」に続き、本学理工学部教授・当センターの土岐憲三センター長、ユネスコ世界遺産センター・市原富士夫氏、韓国文化財庁・崔炳夏氏、イランイコモス・アザール・ヨキレット氏、デリーユネスコ・ロヒト・ジギャス氏による、文化遺産防災に関する発表討論があり、約100名の行政学術関係者が参加した。

15-16日専門家会議では、国連防災世界会議(2005年12月神戸)の勧告に示された、文化遺産防災の国際研修のあり方について検討した。全ての議事司会は当センターの益田兼房特別招聘教授、コーディネートは当センターの板谷直子ポスドク研究員が担当した。

2005-12-09第18回京都歴史災害研究会

鹿児島大学法文学部の森脇広教授から、「火山灰編年と火山災害」と題する講演があった。各地の地層には火山灰の堆積がみられるが、これは火山活動の記録であり、火山灰編年学の進展によってどこの火山のいつの噴火によるものであるかが判明するようになった。これを利用して、火山災害の歴史をたどるだけでなく、地層の堆積年代を求めることも可能になるということを述べられた。

2005-12-08国際共同研究シンポジウム

2005年3月に研究協力協定を締結した台湾国立成功大学との国際共同研究シンポジウム「歴史都市における文化遺産防災を考える-京都および台南の事例から-」が開催された。台湾より、李徳河教授(国立成功大学)、葉光毅教授(国立成功大学)、古志生副教授(義守大学)、紀雲曜助理教授(長栄大学)、林宏明助理教授(立徳管理学院)、夏皓清博士班研究生(国立成功大学)の6名が来日し、歴史都市や文化遺産の防災に関する研究の講演が行われた。また、本学からは深川良一教授(理工学部)、伊藤隆郭講師(理工学部)、小川圭一講師(理工学部)より、21世紀COEプログラムでの研究の取り組みに関する発表がおこなわれ、活発な意見交換が行われた。シンポジウムには、本学の教員、学生などを中心に約40名の出席があった。

2005-12-02第1回文化遺産防災シンポジウム

衣笠キャンパス末川記念会館1階ホールにおいて、第1回文化遺産防災シンポジウム「文化遺産の防災-空間情報の分析をめぐって-」が開催された。今回のシンポジウムは、学術フロンティア推進事業・21世紀COEプログラム・ハイテクリサーチセンター整備事業が主催し、参加者は290名に達した。シンポジウムの開催にあたり、本学文学部の吉越昭久教授よりこの目的や趣旨に関する説明があり、その後に5件の講演が行われた。

まず、京都大学防災研究所の田中哮義教授より、「歴史都市の地震火災延焼シミュレーション」と題する講演があり、地震火災被害のリスクを適切に評価できる延焼予測モデルが必要であることが指摘された。次に行われた本学理工学部の江頭進治教授の講演「崩壊・土石流のシミュレーション」では、土石流対策には構造物を用いたハード対策・防災力の向上などのソフト対策が重要あることが述べられた。また、本学理工学部の土岐憲三教授は、「文化遺産のビジュアリゼーション」と題する講演の中で、京都の歴史的建造物の被害などを可視化する方法を示された。さらに、本学文学部の中谷友樹助教授は、講演「歴史都市京都の文化遺産をめぐるGIS」の中で、GISを用いた文化遺産の時空間モデルの可能性に言及された。最後に、国際日本文化研究センターの宇野隆夫教授は、「埋蔵文化財とGIS」と題する講演で、防災研究に用いるためには埋蔵文化財の情報をGIS上で活用できるようにしなければならないことを強調された。

参加者は、文化遺産の防災に空間情報からのアプローチの重要性をあらためて認識することができ、意義のあるシンポジウムとなった。

2005-11-05第8回進捗報告会・第3回見学会

長野市においてメンバーの進捗報告会と見学会を実施した。1日目はメンバーからの進捗報告を行った後、信州大学の土本俊和教授に「善光寺における木造建造物群の現状と災害履歴」と題した講演をお願いした。文化財建造物の現状・修理・改修の状況と、地震や火災などの災害履歴について解説された。2日目は、善光寺の三門保存修復事業を見学した後、地附山の地滑り復旧跡を見学した。

 

2005-10-22立命館大学建設会特別講演会

立命館大学建設会(本学理工学部環境都市系の同窓会)の主催、21世紀COEプログラム、歴史都市防災研究センター、防災システム研究センターの共催により、21世紀COEプログラム「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」をテーマとする特別講演会が開催された。まず、理工学部・土岐憲三教授から「文化遺産の防災と21世紀COEプログラム」と題して、21世紀COEプログラムを取り巻く状況について講演があった。その後、各分野での具体的な 研究課題への取り組みとして、理工学部・村橋正武教授「文化財を核とした歴史都市の計画」、理工学部・深川良一教授「文化財背面斜面の危険度予測システム」、理工学部・平尾和洋助教授「歴史都市を火災から守る」、情報理工学部・川合誠教授「災害・防災情報ネットワークシステム」の4件の講演があった。特別講演会には、本学理工学部環境都市系の卒業生、学生、教職員などを中心に115名の出席があり、本学の21世紀COEプログラムに対する取り組みを関連分野の卒業生、学生に公表する良い機会となった。

2005-10-21防災訓練

防災教育の一環として、消防署(滋賀県湖南広域行政組合西消防署分署)による防災訓練を実施した。消火器を使った訓練を行った後、起震車で地震の揺れを体験してもらった。右下の写真はクリックすると動画再生(約2MB)

 

2005-10-12中間評価結果

21世紀COEプログラム委員会より中間評価結果が発表された。歴史都市における現代的課題に挑戦した新しい研究拠点としてその成果が期待されるとコメントされ、当初計画は順調に実施に移されており、現行の努力を継続することによって目的達成が可能と判断されるとの評価を受けた。詳しくは、日本学術振興会ホームページ参照。

2005-09-30第1回防災・情報シンポジウム

防災システムリサーチセンターと当センターの共催で「災害拡大過程におけるシミュレーション」と題したシンポジウムを開催した。まず、本学理工学部・江頭進治教授「豪雨に伴う崩壊・土石流のシミュレーションと土砂災害対策」、京都大学・井上和也名誉教授「洪水氾濫シミュレーション」、国土交通省近畿地方整備局河川部長・谷本光司氏「河川整備計画」の3名の講演があった。その後、本学客員教授・中川博次コーディネーターのもと、これらの講演者を交えて全体討議が行われた。シンポジウムには、約200名強の官公庁・企業関係者等が参加し、いずれの報告においても講演後に活発な議論が行われ、意義深い内容となった。

2005-09-13新潟県中越地震の震災復興調査

2004年10月新潟県中越地震から1年を前に、震災復興状況の調査を行った。長岡市、十日町市、小千谷市、川口町の、文化遺産や地盤の被災および復旧状況を調査した。十日町市博物館と長岡市立科学博物館では、学芸員の方に被災状況とその後の対策について伺った。縄文式土器は、免震台に置かれていた物も地震で転倒し破損した。今後は免震台に設置するものもテグスで固定する予定とのこと。また、十日町市の秋葉山城跡の土砂滑落現場や笹山遺跡の状況を視察した。今後、詳細な調査報告をまとめる予定である。

 

2005-08-31第4回歴史都市防災シンポジウム

歴史都市防災研究センターと防災システムリサーチセンターとの共催で、「歴史都市を災害から守る先端科学技術」に関するシンポジウムを開催した。まず、台湾国立成功大學の李 徳河教授から、「埋蔵文化財の調査」と題した講演があり、地中レーダーを用いて文化財の発掘支援をする手法と適用例について紹介があった。その後、本学の理工学部都市システム工学科・深川良一教授「重要建造物周辺斜面における崩壊予測システムの開発」、COE推進機構ポスドク研究員・水田哲生氏「水害に備える-金銭的手法による減災という観点から-」、理工学部都市システム工学科・塚口博司教授「交通ネットワークの視点からみた歴史都市防災」、そして理工学部電気電子工学科・中西恒彦教授「自動車交通流の計測と推定」と4題の講演があった。約120名の参加があり、防災問題に関する関心の高さが伺えた。

 

2005-07-14第17回京都歴史災害研究会

寛文二年(1662)近江・若狭地震について二題の講演があった。まず、(独)産業技術総合研究所主任研究員の小松原琢氏が、起震断層と震源過程に関して講演された。トレンチ調査の結果、寛文地震では、若狭・日向断層から京都・花折断層北部に至る40km程度の断層が活動したと考えられる。花折断層南部や琵琶湖西岸断層は、このとき動いたという証拠はない。次に、大谷大学大学院文学研究科の西山昭仁氏より、京都の被害と震災対応に関して講演があった。仮名草子「かなめいし」等の文書に見る被害状況や震災対応について詳しく説明された。京都の被害は局所的なものにとどまり、大被害は少なかった。

2005-06-18歴史都市防災研究発表会

メンバーによる研究発表会を実施した。9:00から18:00まで5つのセッションにわたり、これまで2年間の研究成果を発表し、外部からの参加者も交えて活発な討議を行った。

 

2005-06-17第16回京都歴史災害研究会

関東学院大学経済学部の松田磐余教授より、「東京の地震災害史:安政江戸地震と関東地震」と題して講演が行われた。江戸・東京の地震被害史と東京の地形発達史についてまず説明され、その後、1855年安政江戸地震(内陸直下型)と1923年関東地震(海溝型)の東京における被害について比較された。どちらも火災による被害が多かったのは共通しているが、関東地震では共振による被害が顕著だったのに対し、安政江戸地震では震源近くに被害が集中したことが述べられた。

2005-05-20第15回京都歴史災害研究会

岡山大学大学院文学研究科の内田和子教授より、「土地の歴史からみた災害の地域分析」と題して講演が行われた。自然の地形発達と、人工的な土地改変と、この2つの組み合わせが水災害の様相を左右する。近年の高潮や洪水の被害例を元に、干拓地や旧河道の災害脆弱性について述べられた。

2005-04-22第14回京都歴史災害研究会

本学文学部の吉越昭久教授より、「近世における京都・賀茂川の景観と防災」と題して講演が行われた。17世紀に築堤された寛文新堤について、その成り立ちや社会に対する影響について説明があった。河道の固定や新しい街の発展には寄与したが、その後の洪水は減っておらず、必ずしも防災的な意義を持たなかったことが指摘された。

2005-03-16京都における歴史文化地域の都市開発と保存の政策化・国際ワークショップ

衣笠キャンパスにおいて、今回が2回目の国際協力研修となる「京都における歴史文化地域の都市開発と保存の政策化」をテーマに、政策科学部の協力を得て、タイ・タマサート大学建築学部都市地域計画学科23名の学生との共同ワークショップを2005年3月16日より25日にかけて開催した。

 

2005-03-16第13回京都歴史災害研究会

佛教大学文学部非常勤講師の中村武生氏より、「豊臣政権と徳川公儀の治水-堤防としての京都惣構(そうがまえ)-」についての発表が行われた。まず、御土居ではなく京都惣構という用語を使用する理由に触れられ、その築造の意義についてこれまでの研究史を整理した上で、竹林園と水濠による美観演出もその一つであることを明らかにされた。また、京都惣構は堤防としての意義があり、治水に果たした役割について再考すべきこと、惣構を近世都市史の中で研究すべきことなどを強調された。

2005-03-11台湾・成功大学との研究協力協定

立命館大学・歴史都市防災研究センターと台灣国立成功(Cheng-Kung)大学・公共工程研究中心(台南市)は、両大学の関係を緊密にし、歴史都市防災に関する学術・技術体系の確立を図るとともに、これに必要な人材を育成するために、互いに協力することに合意した。本学より塚口博司教授を団長とする訪問団が台湾を訪れ、セミナーを開催するとともに、研究協力協定書の交換を行った。セミナーでの台湾側の参加者は以下の通り。Prof.Der- Her Lee(National Cheng-Kung University)、Prof.Kuang-Yih Yeh(National Cheng-Kung University)、Prof.Chin-Sheng Ku(I-Shou University)、Prof.Alex Y.L.Lee(Chang Jung Christian University)、Prof.Yun)

 

2005-03-10COE国際シンポジウム

ベネズエラ国ベネズエラ中央大学のロペツ教授(Prof.Lopez)、ファルコン教授(Prof.Falcon)、イタリア国サレルノ大学のパパ博士(Dr.Papa)およびイタリア国ナポリ大学のマルチノ博士(Dr.Martino)を招聘し、本学のびわこ・くさつキャンパスにおいて、2日間の国際シンポジウムを開催した。ベネズエラ国では、1999年にバルガス州での洪水・土石流災害を経験し、一方、イタリア国では、1998年にサルノ土石流災害を経験し、招聘した先生方は、それぞれの災害において調査・研究を中心的に推進している。今回のシンポジウムでは、COE研究課題の「大規模洪水・土砂移動現象に関する研究」に焦点を当て、研究発表および研究討論を行った。本学、他大学および民間のコンサルタント会社から40名の参加を得て、それぞれの研究および業務に関連した熱心な議論が行われた。

2005-03-08第7回歴史都市防災セミナー

まず、本学文学部の高橋学教授より、「2004年中越地震における震災発生メカニズム」と題して講演があった。新潟県中越地震と、その前に発生した紀伊半島沖地震とを調べると、関連性が見受けられる。また、新潟県中越地震の被害には、地理的条件の他にも棚田を養鯉池にしたことも影響しており、社会経済的条件の地震被害の大きな要因である。次に、本学理工学部の山本直彦講師より、「スマトラ沖地震:スリランカ南部・西部の被災直後の状況報告」と題した講演があった。スリランカでオランダが築いた城塞都市ゴートで津波に遭われた経験と、スリランカの文化遺産について紹介があった。

2005-01-28第12回京都歴史災害研究会

本学文学部教授の片平博文氏から「賀茂川の歴史的景観と左岸地域における洪水の痕跡」について発表が行われた。条里制地割の乱れから、賀茂川左岸における中世の洪水の痕跡を求めた結果、帯状に伸びる洪水の範囲が復原された。また、その時期は種々の史料などから検討した結果、寛喜3年から宝徳3年までの間であることも明らかにされた。このような内陸誘導型洪水の事例は、著名な慶滋保胤の『池亭記』(982年)にもみることができる。

2005-01-19国連防災世界会議・パブリックフォーラム「文化遺産を災害から守るために」

広く文化財防災に係わる機関や学会が連携して文化遺産防災連絡会議を構成し、文化遺産を核とした歴史都市の防災、文化遺産の自然災害史、被災した文化遺産の修復等に関するシンポジウムを、国連防災世界会議のパブリックフォーラムの一環として実施した。ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏の講演を始め、2日間にわたって特別講演会とシンポジウムを開催し、延べ500人の参加者があった。詳しくはこちらへ。

2005-01-11第4回文化遺産防災連絡会議の開催

文化遺産防災に関連する諸団体に集まっていただき、第4回文化遺産防災連絡会議を開催した。2005年1月に神戸で開催される国連防災世界会議で開催するシンポジウムの最終打ち合わせを行った。

2004-12-21第11回京都歴史災害研究会

京都府立大学文学部学部長の水本邦彦教授より、「江戸時代の雨乞いについて」と題した講演があった。雨乞いには、雨を乞う行事と返礼の行事があり、村単位で雨乞いに取り組んでいた。

また、山上で火を焚いて天に祈る朝鮮半島系と、村の中で龍神や氏神に祈る中国大陸系が、日本では混在して見られる。日照りという長期にわたる自然災害に対し、人間が想像した雨を降らせる神に積極的に働きかける行為として、人間と自然との関わりについて考えさせられるものである。

2004-12-17救急救命講習会の開催

防災教育の一環として、消防署(滋賀県湖南広域行政組合西消防署分署)による普通救急救命講習会をBKCキャンパスにおいて実施した。教員も含め、防災研究に携わる学生達に受講してもらった。

2004-12-13第3回文化遺産防災連絡会議の開催

文化遺産防災に関連する諸団体に集まっていただき、第3回文化遺産防災連絡会議を開催した。2005年1月に神戸で開催される国連防災世界会議で開催するシンポジウムのプログラムと役割分担について検討した。

2004-12-09アスターフェアへの参加

立命館大学で開催された産学協同イベント「アスターフェア」に参加し、COEに関するパネルを用いた展示を行った。

2004-11-26地盤災害に関する特別講演会

マレーシアで降雨による斜面災害について精力的な研究を展開しておられるProf.Shukri Maail(University Putra Malaysia, Faculty of Engineering)にBKCキャンパスへ来ていただき、「Damage by slope failure during heavy rain in Malaysia」という講演をしていただいた。20名近い参加者との間で活発な意見交換がなされた。京都の文化財は斜面に近い場所に多く存在していることを鑑みると、今後のCOE研究展開に有用な示唆を与えるお話をお聞きすることができた。

2004-11-16第3回歴史都市防災シンポジウム

末川記念会館ホールにて、「災害史と防災の視点」というテーマで5件の講演があった。まず、産業技術総合研究所関西地質調査連携研究体長の寒川旭氏から「京都盆地周辺の地震考古学」として、地震の痕跡と史料とを組み合わせて地震災害を明らかにする地震考古学に関する講演があった。過去に発生した京都盆地周辺の大地震について、文化遺産の立地条件も含めて興味ある事実が紹介された。三重大学名誉教授の水越允治氏からは「中世における京都の気象・気候災害-特に15・16世紀について-」という講演があり、古記録を元に歴史時代の気候の復元を試みた例について説明された。鴨川の洪水が、周囲の地形・気象条件と深く関わることなど興味ある研究成果が紹介された。続いて神奈川大学非常勤講師の北原糸子氏から「写真以前(近世)と写真以後(近代)-災害イメージはいかに変化したか-」という講演があり、近代に入って災害情報メディア、特に写真の登場によって、人の災害に関するイメージの変化が起こったということを、多くの災害写真を示されながら説明された。本学客員教授(財団法人冷泉家時雨亭文庫理事長)冷泉為人氏より、「江戸時代京都公家町の火災と再建」として、現在の京都御苑近辺の災害に関わる講演があった。いくつもの取り決めや蔵造りなどの対策が防火に効果があったことなど、興味深い史実も示された。最後に、本学文学部助教授の山崎有恒氏より、「岩倉使節団と防災」と題した講演があった。岩倉使節団を近代防災の原点と位置づけ、近代技術で自然(災害)を制するという使節団がもたらした考え方などが説明された。

2004-11-15第2回文化遺産防災連絡会議の開催

文化遺産防災に関連する諸団体に集まっていただき、第2回文化遺産防災連絡会議を開催した。文化遺産の防災に関する諸問題について議論し、2005年1月に神戸で開催される国連防災世界会議で開催するシンポジウムについて検討した。

2004-11-12第10回京都歴史災害研究会

名古屋大学大学院国際開発研究科の櫻井龍彦教授より、「災害の民俗的イメージ-記憶された体験の共有と伝承-」と題した講演があった。民俗学的な視点から、まず、自然災害の原因として信じられてきた天罰・悪霊・妖怪物について、次に、予防論、救済論について説明があり、文化的景観としての京都に関しても論じられた。歴史的文化財には先人の祈りが込められており、そこから防災意識を読み取ることが重要であると述べられた。

2004-10-23知恩院見学会

メンバーによる見学会として、京都の知恩院を訪れた。国宝建造物である御影堂と三門をはじめ、主に防災施設を特別に見せていただき、詳細な説明を受けた。

2004-10-22第9回京都歴史災害研究会

京都府土木建築部河川課の安田勝氏(防災・海岸係長)より、「鴨川の水害と治水の歴史、そしてこれからの防災対策」と題した講演があり、鴨川の特徴や水害と治水の歴史について詳細な説明があった。近年の局地豪雨の多発や、雨水が流出するまでの時間が都市化に伴って短くなる傾向、都市型水害の危険性の増大について述べられ、今後考えていくべき水害対策について課題が示された。

2004-09-22第1回文化遺産防災連絡会議の開催

文化遺産防災に関連する諸団体に声をかけ、第1回文化遺産防災連絡会議を開催した。2005年1月に神戸で開催される国連防災世界会議のオープンフォーラムにおいて、共同でシンポジウムを開催することが合意された。

2004-09-16第6回歴史都市防災セミナー

新しくオープンした立命館大学歴史都市防災研究センターで初めて開催された。
冒頭、センター長の土岐憲三教授より、これからのセンター活動について紹介があった。最初の講演は、京都市消防局理事(防災・危機管理担当)の奥山脩二氏より、「地域から進める京都の防災」として、センターのある元の格致小学校およびその格致学区についての歴史的な紹介、および、地域の防災力を活かした京都の防災対策について説明があった。歴史都市・京都では、市民だけではなく観光客の生命も守らねばならないこと、文化(財)を守り京都らしさを守りながら都市構造上のマイナスをどう克服するかという問題があり、地域の力や大学など、京都の特性を防災に活かす必要がある。

続いて、本学客員教授(京都大学名誉教授)の中川博次教授より、「京(みやこ)の川と水」と題した講演があった。鴨川の洪水と河川改修の歴史が紹介され、鴨川の洪水特性と京の街の発展との関係が述べられた。また、京都の地下水に関する問題が指摘され、地下水の保全・涵養の必要性や京都市水共生プランについて説明があった。都市化によって変化してしまった健全な水循環系を回復することが重要である。
最後に、副センター長である村橋正武教授より、閉会の辞が述べられた。

2004-07-15建設技術展への出展

マイドーム大阪で開催された建設技術展2004近畿に、昨年度に引き続いて文化遺産の防災技術としてパネル展示を行った。

2004-07-15第8回京都歴史災害研究会

京都学園大学人間文化学部の佐々木高弘教授により、「伝承された洪水とその後の景観 -カオスからコスモスへ-」と題して講演があった。世界の洪水伝承や日本の伝説から、人間の環境知覚について解説された。世界の洪水伝承には、人間の堕落→神の怒りとしての洪水→残った人の婚姻→起源説話という、かなり共通したパターンが見られる。洪水が起こる場所で開拓や移住を進める意志決定に、神話による環境知覚が用いられたのではないかという説明があった。

2004-06-18第2回歴史都市防災シンポジウム

末川記念会館ホールにて、「歴史都市の文化遺産をいかに火災から守るか」をテーマにシンポジウムが開催された。まず、COE研究拠点リーダーの村橋正武教授から歴史都市防災に関するCOEの取り組みについて、全体的な概要説明があった。その後、招待講演として東京大学大学院人文社会系研究科の鈴木淳助教授から、「戦前の消防近代化と京都」と題した講演があり、京都を東京や大阪と比較しつつ、江戸から明治・大正へと消防が近代化されていく過程について詳しい説明がなされた。京都の近代消防の導入は、市街地全般の出火が東京に比べて少ないこともあり、市の消防力の増強は積極的とは言えず、むしろ直接的な火災の脅威を感じた寺院や皇宮等の自衛消防が発達したのが特徴であった。

後半はCOEメンバーによる講演である。文化遺産を火災から守るためには、まず被災してきた歴史を知ることが重要であり、本学理工学部建築都市デザイン学科の山崎正史教授から「京都の伝統建築の被災史-東山の寺院群に関して」という講演があった。自然災害だけでなく、応仁の乱などの戦乱や、政治的社会的な理由でも多くの神社仏閣が失われてきた歴史が紹介された。

また、自然災害時に道路が使えるのかどうかは、消火作業に大きな影響がある。本学理工学部都市システム工学科の小川圭一講師から「交通ネットワークの視点からみた文化遺産防災」と題して、京都の文化遺産と消防署との位置関係や交通網の分析結果が紹介された。

最後に、京都大学大学院地球環境学堂の大窪建之助教授(立命館大学客員教授)が、「地震火災から文化遺産と木造都市をまもる『環境防災水利』整備の技術と計画」と題した講演を行い、白川郷や金沢の例を紹介するとともに、普段から市民が利用できる水利拠点に関するデザイン研究の状況が報告された。100人ほどの聴衆が熱心に聞き入り、歴史都市防災への関心の深さを伺わせた。

 

2004-06-11第7回京都歴史災害研究会

花園大学の伊藤安男名誉教授により、「蘭人雇工師たちの治水思想」と題して講演があった。デレーケの業績を中心に、スライドも交えて多くの資料が紹介された。彼らの水源の治山・砂防重視の治水思想は日本の山川に学びながら発展してきたものであるが、当時オランダの植民地であったジャワ島での知識が役立っている。単に川に堤防を築くだけではなく、水源である山林を含め流域を総合的に見る考え方は、現在にも生きている。

2004-05-26第6回京都歴史災害研究会

奈良大学文学部の池田碩教授により、「比叡山地の地形と1972年9月修学院音羽川災害」と題した講演があった。比叡山地が形成される成り立ちから話が始まり、1972年の台風20号通過に伴う音羽川での鉄砲水・土砂災害の状況まで、地理学的見地より詳しい説明があった。古くから同様の事象が繰り返されてきたことは、「出水」「水河原町」等の地名にも表れており、都市化が進んだことが大きな災害につながった。地元の人や子どもたちに対する防災教育の重要性にも言及された。

2004-05-22関西地区21世紀COEプログラム 研究ワークショップ

平成14年度より実施されている「21世紀COEプログラム」においては、関西地区の土木工学関連分野で、3テーマに関する教育研究拠点が採択されているが、いずれも「防災にかかわる学術体系の確立」をキーワードとする、比較的関連の深い研究内容となっている。そこで、土木学会関西支部年次学術講演会(於:立命館大学BKCキャンパス)の開催にあわせ、研究紹介と21世紀COEプログラム相互の情報交流を目的に、3大学のCOEの共催によるワークショップを開催し、124人の参加者があった。

まず、当センターのセンター長である土岐憲三教授より、「COEプログラムと土木工学」と題して、土木工学の今後について真剣に考えていかねばならない状況について講演があった。次に、京都大学防災研究所のCOE「災害学理の究明と防災学の構築」、神戸大学のCOE「安全と共生のための都市空間デザイン戦略」、立命館大学のCOE「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」について、それぞれ概要説明と活動内容が報告された。最後に全体討議が行われ、考えるべき災害外力の大きさや、それを社会に認知させるための合意形成などについて、フロアーも交えて各大学COEの意見交換を行った。

 

2004-05-15日本文化財科学会第21回大会

日本文化財科学会第21回大会(於:立命館大学以学館)において、文化遺産の防災技術としてポスターセッションの展示を行い、多くの来場者に対してCOE拠点の説明を行った。

 

2004-05-09歴史都市保全と再生の政策研究ワークショップ

3人の専門家による話題提供をふまえて、会場に集まった40名近くのフロアとの質疑応答が行われた。モデレータを務めた鐘ヶ江秀彦・政策科学部助教授による趣旨説明の後に、まず慶應義塾大学の梶秀樹先生からの「地震災害と歴史都市保全-地域防災力の向上をめざして-」で口火を切り、次に名古屋工業大学の谷口仁士教授から「歴史構造物の地震防災マネージメント-東海地域の実態は-」が提示され、3番目に千葉大学の山崎文雄教授から「歴史都市のデジタル・アーカイブを造ろう」と進められた。ワークショップ参加者の大多数を占めた学生たちからは活発な意見や質問が出され、2時間半があっという間に過ぎていった、大変に密度の濃いワークショップであった。また、3人の先生方から頂いた、学生たちへの熱い激励のメッセージも、土産のひとつとなった。

2004-05-08第5回歴史都市防災セミナー

「2003年イラン・バム地震におけるアルゲバム城塞の被害とアドベ・組積造構造物の崩壊メカニズム」と題し、京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻の清野純史助教授の講演があった。2003年12月26日、イラン南東部バム市に発生したM6.5の直下型地震被害について、被害の状況が報告された。建物は日干しレンガや焼きレンガを用いて作られており、無補強の組積構造の崩壊によって、人口約12万人の内4万3千人の死者を数えた。約2000年前に建てられた貴重な文化遺産であるアルゲバム城塞が原形をとどめない被害となった。

2004-04-17第4回歴史都市防災セミナー

「歴史都市における防災情報ネットワークのあり方」というテーマで開催され、約40名の参加があった。まず、NTTインフラネット株式会社の湯澤正和氏・山本隆宣氏・志方弘樹氏より、「防災関連サポート施策-防災システムツール及び電線類の地中化」について講演があった。電線の地中化等、地下設備の取組みの紹介や、崩壊の危険性のある斜面における監視体制システムの構築について説明があった。続いて、立命館大学情報理工学部情報コミュニケーション学科の川合誠教授より、「災害と情報ネットワーク」と題して、衛星通信、災害情報ネットワークシステム、およびアドホックネットワークシステムについて講演があった。衛星通信について長年取り組まれてきた研究内容も含め、日本における衛星通信の活用の起源から、災害時の利用の現状、防災利用としての活用事例が紹介された。

2004-04-16第5回京都歴史災害研究会

近世災害史研究の第一人者、国立歴史民族学博物館客員教授の北原糸子氏をお招きしての研究会を開催。2月にアメリカ・ワシントンDCで開催された国際会議「自然災害と文化戦略-世界における災害対応を見る-」に参加された際のメモをもとに、世界の歴史災害研究の現状、その中で日本の歴史災害研究が占める位置、今後この分野の研究はどうあるべきか、などについてお話しいただいた。世界で進められている歴史災害研究の多くが歴史学そのものに研究の帰結点を求めているのに対し、多種多様な災害に見舞われてきた日本の歴史災害研究にはその成果を社会に還元しようとする発想が強く、したがって日本でこの分野の研究を大きく発展させることは、歴史学が社会に貢献しうる存在であることを世界に示すことにつながるとの刺激的な議論に、意見交換も大いなる盛り上がりを見せた。

2004-03-24平成15年度沖縄国際フォーラム

国際交流基金・沖縄県主催、外務省・文化庁後援の国際フォーラム「沖縄うたきとアジアの聖なる空間:文化遺産を活かしたまちづくりを考える」にユネスコとともに協力し、ICCROMのHerb Stovel教授の招聘や、益田兼房立命館大学客員教授による講演などを行った。

2004-03-23第1回国際歴史都市防災ワークショップ

末川記念会館のホールにて開催された。ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)のハーブ・ストーベル博士からは、「International perspectives in risk preparedness for cultural heritage」と題して国際的な枠組みからみた文化遺産保護の保存に関する視点について講演があった。東京藝術大学の益田兼房教授(立命館大学客員教授)からは、「京都の世界文化遺産と防災上の課題」と題して、京都の文化遺産のもつ防災上の問題点とそれに対する対策に関する講演がされた。また、センター長の土岐憲三教授(理工学部土木工学科)からは、「文化遺産の防災対策に係わる活動の現状」と題して、文化遺産保全の重要性と官民学がそれぞれ連携・協力してそれらを保全していく枠組みに関する講演がされた。文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点に対する国際的、および社会的要請の大きさが伺われた。

2004-03-18第4回京都歴史災害研究会

東京大学大学院人文社会系研究科の鈴木淳助教授より、「消防の近代化-江戸・東京を中心に-」と題して、消防の歴史について講演があった。江戸(東京)だけでなく、大阪や京都についても説明があり、技術の発展と契機となる災害とが消防を近代化させてきた経緯が述べられた。

2004-03-17歴史都市京都のまちづくりと保全・国際ワークショップ

立命館大学衣笠キャンパスにおいて、タイのタマサート大学からの22名の大学生及び2名の教授を迎え、これに政策科学部COEメンバーと10名の学生による「歴史都市京都のまちづくりと保全」ワークショップを開催した。

2004-03-13第3回歴史都市防災セミナー

産業技術総合研究所主任研究員の寒川旭氏より、「京都盆地周辺の地震考古学」と題する講演があり、発掘現場から過去の地震を考察する手法について説明があった。発掘現場から液状化の痕跡等が見つかると、地震の発生年代の特定ができ有用である。

2004-02-21第2回歴史都市防災セミナー

立命館大学BKCイーストウィング建設環境系研究室1にて開催され、32名の参加があった。まず、本学COE推進機構特別研究員の安川郁夫氏より、「直下型地震と防災井戸の役割」と題した講演があり、直下型地震のメカニズムや兵庫県南部地震の経験をふまえた防災井戸の役割について説明があった。次に、京都大学大学院地球環境学堂の大窪健之助教授(本学客員教授)より、「地震火災から文化遺産と地域を守る環境防災水利整備の考え方-事例から学ぶ計画手法-」と題した講演があり、文化遺産を地震火災から守るための手法について、計画やマネジメントの話も含めて詳細な説明があった。どちらも、講演後に参加者との活発な質疑応答がなされた。

2004-01-16第3回京都歴史災害研究会

衣笠キャンパス修学館第3共同研究会室において、20名の出席者を得て行われた。本学COE研究推進機構の河角龍典講師により、「歴史時代の地形環境変化と鴨川の水害」と題する講演があり、平安京の一部に10世紀末に形成された段丘崖が、その後の水害に大きな影響を与えたことが説明された。

2003-12-20第1回歴史都市防災セミナー

立命館大学中川会館401会議室にて開催され、20名の参加があった。まず、京都大学防災研究所の澤田純男助教授より、「京都市域の地震動予測」と題した講演があり、兵庫県南部地震の経験をふまえた新しい知見に基づく地震動予測について、その理論や手法について詳細な説明があった。将来、活断層が動いた場合に、京都市にとって最も不利な条件での震度状況が示され、活発な質疑応答がなされた。次に、京都大学防災研究所の田中哮義教授(本学客員教授)より、「京都における歴史的大火について」と題した講演があり、平安京の昔から明治にかけての記録に残る大火について詳細な説明があった。京都における数多くの寺社仏閣が、火災によって失われてきた状況が示され、その後フロアーとの質疑応答がなされた。

2003-12-19第2回京都歴史災害研究会

衣笠キャンパス修学館第3共同研究会室にて開催された。三重大学の水越允治名誉教授より「歴史時代の日々の天候記録集」と題した講演が行われた。

2003-11-27建設技術展への出展

マイドーム大阪で開催された建設技術展2003近畿に、文化遺産の防災技術としてパネル展示を行った。2日間で1万人以上が訪れる大規模な展示会で、多くの来場者に対してCOE拠点の説明を行った。

2003-11-21第1回京都歴史災害研究会

末川記念会館にて、約20名の参加で開催された。まず、センター長の土岐憲三教授より、「文化財防災ことはじめ」と題する講演があった。続いて、仏教大学文学部の植村善博教授より、「京都の地震環境とその後の進展」に関する講演が行われた。最後に立命館大学文学部の吉越昭久教授より、京都歴史災害研究会の発足と運営に関する説明があった。

2003-11-17第1回歴史都市防災シンポジウム

衣笠キャンパス末川記念会館にて、シンポジウムが開催され、132名の参加者があった。第1部「21世紀COEプログラムの概要」および第2部「立命館大学歴史都市防災研究センターについて」に分かれて講演があった。文化庁文化財部建造物課長の苅谷勇雅氏より、「文化遺産を核とした歴史都市の防災に関する研究への期待」と題する講演があり、本COEプログラムに対する社会的要請の大きさが伺われた。

 

2003-10-13冷泉家見学会

メンバーによる見学会として、特別に許可を得て冷泉家を訪れた。本学客員教授でもある冷泉為人冷泉家時雨亭文庫理事長より、放水銃や非常発電設備など冷泉家の防災施設の説明があり、各所を見学した。