プロジェクト

所長挨拶

地域に根ざした文化遺産とこれを取り巻く歴史都市は貴重な社会的共通資本です。それは長い時間をかけて醸成されてきた人々の文化的活動の結晶であり、ひとたび失うと二度と再生できません。

この先人たちから受け継いだ文化的価値を維持しながら、災害の脅威から守り、次世代へと受け渡していくことは現代を生きる私たちの責務です。

文化遺産や歴史都市の持つオリジナリティを損なわずに、地域に根ざしたコミュニティや伝統、水や緑などの地域資源を活かした減災に取り組むためには、減災を文化に高めるための新しい考え方が必要になります。このため文化遺産防災、あるいは歴史都市防災というテーマの下では、これまで別々に取り組まれてきた人文社会学における文化を保全するための分野と、理工学における都市や建築を災害から守る分野を融合してゆく必要があります。その理念に向かって私たちは、災害科学、土木工学、建築学、情報学、政策科学、歴史地理学などに加え、GISやアーカイブ等の情報技術を駆使する立命館大学アート・リサーチセンターとも連携しつつ、国内外の人材と研究プロジェクトが集うプラットフォームを構築しています。

学術のみならず、一刻も早い災害対策の実現をサポートすることも私たちの使命です。それには実践的な教育と研究が不可欠であり、地域社会を始めとした産官学の連携を積極的に進めています。

企業と共に伝統に学びつつ新たな技術開発に取り組み、地元コミュニティや地域行政、NPOと共に、歴史的町並みや文化遺産の防災計画づくりを進め、NGOやUNESCOをはじめとする国際機関と協働して世界遺産の危機管理に取り組むなど、ネットワークを活かした実践的活動を進めてまいります。

「文化遺産防災学」の発展、文化的価値を継承する歴史と伝統の研究、実践的な防災技術の獲得、即戦力となる実務家と研究発展を担う若手研究者の輩出を通して、当該分野の国際的な中心拠点として、社会貢献へ向けた機能を発揮できる教育研究環境を確立していく所存です。

皆様方のご支援、ご協力を賜りますよう、心よりお願いを申し上げます。

歴史都市防災研究所
所長 大窪健之