審査委員

皆さんから寄せられた提案に対しては、下記のような領域横断的な審査メンバーによって多角的かつ総合的な講評と議論を行い、災害に強く、将来にわたって文化遺産の価値が育まれるような歴史都市のありかたを探究します。(以下、50音順、敬称略。)

足立裕司
過去と未来を見つめる建築史家
神戸大学工学部教授・自然科学研究科教授・国際協力研究科教授。建築から都市環境にいたる近代化の過程を、社会的、文化的背景を含めて再考すると同時に、開発と表裏をなす問題としての歴史的建造物を含めた歴史的環境の保全についての研究を行う。文化遺産の保全に関する国際協力のあり方についてもUNESCOやICOMOSの活動を踏まえながら研究。最近の活動としては兵庫県下の近代化遺産調査、個別には生野鉱山を中心とする鉱山町の調査を行い、地域に残る歴史的建造物を活かして、どのような地域の活性化方策が考えられるかを研究している。著書に『阪神・淡路大震災と歴史的建造物』(思文閣、1998)、『栄光の残像』(出版社澪、2000)、『関西のモダニズム建築20選』(淡交社、2001)など。
佐々木葉二
ランドスケープ・アーキテクト
京都造形芸術大学環境デザイン学科教授。日本を代表するランドスケープ アーキテクトの一人。主なランドスケープ作品に、さいたま新都心けやき広場、六本木ヒルズ、衆議院議長公邸、シンガポール理工系専門学校、などがある。1973年大阪府立大学大学院修士課程(緑地計画工学専攻)修了、88-89年ハーバード大学大学院ランドスケープ アーキテクチャー学科客員研究員、89年鳳コンサルタント㈱ 環境デザイン研究所所長の後、鳳コンサルタント(株) 環境デザイン研究所・佐々木デザイン室代表。日本造園学会賞(設計作品部門)ほか米国ASLA賞、グッドデザイン賞など受賞多数。 著訳書に『佐々木葉二作品集』(マルモ出版、2004)、『庭の意味論』(鹿島出版会、1996、共訳)、『見えない庭』(鹿島出版会、1997、共訳)など。
髙田光雄
建築と都市をつなぐ居住空間学
京都大学大学院工学研究科教授。専門領域は居住空間学。建築計画と都市計画の境界領域として位置付け、現場の視点に立った市民との協働によるまちづくりや、あたらしい 集住のあり方について研究を進めている。実際の住まい・まちづくりプロジェクトのプロデュースやコーディネーションに関する実績多数。1977年京都大学大学院工学研究科修了。京都大学助手などを経て、現職。都市住宅学会副会長、京都府建築士会副会長、京都市住宅審議会会長など歴任。1996年日本建築学会賞、2001年日本建築士会連合会賞、2003年都市住宅学会賞など受賞。著書にNEXT21-その設計スピリッツと居住実験10年の全貌-』(エクスナレッジ、2005)、『体験!まちづくり学習』(学芸出版社、2003)、『少子高齢時代の都市住宅学』(ミネルヴァ書房、2002)など。
田中哮義
性能的火災安全設計の第一人者
京都大学防災研究所教授。建築物の性能的火災安全設計、建築・都市火災安全工学、都市防災計画および地震災害予測の専門家。建物の性能的規定を提案し、そのための実務的な火災性状予測技術の整備として煙制御設計計算法等をはじめ様々な予測・評価技術を開発。都市計画スケールにおいても、大地震火災による被害の評価ツールとして物理的市街地火災延焼予測モデルを開発し、有効で経済的な都市防災対策と避難計画について研究を展開。東日本大震災に対しては「地震・津波・火災に対する生活の安全性と産業の持続性を考慮した三陸沿岸都市の復興計画の提案」を発表。著書に『火災と消火の理論と応用』(東京法令出版、2005)『避難安全検証法 設計実務ハンドブック―性能設計で変わる建築設計の実務』(清文社、2005)、『建築火災安全工学入門』(日本建築センター出版部、2002(改訂版))他多数。
土岐憲三
文化財防災学の創始者
立命館大学教授、理事長顧問、立命館大学歴史都市防災研究センター センター長、NPO法人災害から文化財を守る会 理事長、博士(工学)。専門は地震工学と文化遺産防災学。1966年同大学院工学研究科博士課程修了。京都大学教授、東京大学客員教授、京都大学工学研究科長、工学部長、総長補佐などを経て、2002年より現職。国連上級科学顧問、世界地震工学会日本代表、土木学会副会長、日本自然災害学会会長、日本地震工学会会長、などを歴任。阪神淡路大震災前、地震は起きないといわれた関西で地震観測網をつくり冷笑されたが、その8ヵ月後に大震災が起きた体験をもつ。大震災の教訓を学ぶ研究集会「メモリアルコンファレンスインコウベ」や「地震火災から文化財を守る協議会」を創設するなど、行動派の研究者として知られる。編著多数。
三村浩史
人間と環境が共生する「まちづくり」
京都市景観・まちづくりセンター理事、京都大学工学部名誉教授。これまで日本建築学会理事、同都市計画委員長、日本都市計画学会評議員、京都市住宅審議会会長、文化庁文化財保護審議会専門委員などを歴任。博士論文のテーマは「地域空間のレクリエーション利用に関する研究」、大阪府企業局技師として千里ニュータウンの開発計画にも参画。住民と企業、高齢者・障害者・子供たち・様々な人々、人間と環境が共生する「まちづくり」のための共同作業としての都市計画のあり方を探求。著書に『歴史都市の破壊と保全・再生―世界のメトロポリスに見る景観保全のまちづくり』(翻訳、海路書院、2006))、『地域共生の都市計画』(学芸出版社、2005(第二版))、『地域共生のまちづくり―生活空間計画学の現代的展開』(学芸出版社、1998)、『すまい学のすすめ』(彰国社、1989)他多数。
村山忠彦
「京都」を守る醸造家
京都ライオンズクラブ第58代会長、村山造酢株式会社代表取締役。 享保年間(1716~36)から続く伝統の醸造法に近代の技術を加え「京酢」を作り続けている。その醸造法に対する思想はその製法にとどまらない。「蔵」の土壁に住む微生物、そして食の文化・歴史も醸造の一部として考え、創業以来「蔵」の土壁を今も守り続ける。さらに、醸造される酢は「京都」の恩恵の一部であるととらえ、商標「千鳥」に込められた古歌「加茂川や清き流れに千鳥すむ」の思いのとおりに、所有する「蔵」のみならず「川」を、伝統文化の宝庫「京都」を守るため京都・祇園祭ボランティア21元会長、社団法人京都府物産協会副会長も歴任。一方で、生涯学習センター「京都カラスマ大学」では「京酢×イタリアン」を授業として行うなど、「京都」を守り、これからの「京都」も創る醸造家。

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