我々が現在生活している都市の多くは、その魅力の大部分を歴史時代の神社仏閣やまちなみ、近代の芸術作品など過去の時代につくられた文化遺産に負っています。しかも、文化遺産を創出した地域の多くは今や大都市に飲み込まれ、文化遺産の数々は潜在的な災害の海に漂っている状況にあります。これらの文化遺産を現代技術によって災害から守る必要があることは論を待ちませんが、それだけでは文化遺産や歴史都市の価値を将来にわたって守ることにはなりません。文化が常にその時代と社会に育まれるものである以上、守る技術と活動が、守るべき文化遺産と一体となって美しい生活環境を提供し、21世紀の文化的景観として後世に引き継がれねばならないからです。
以上の視点に立ち、「文化遺産防災アイデアコンペティション」では、文化遺産の防災機能を向上しながら、より良い都市環境づくりにつながるデザインやアイデアの提案を募集します。提案に対しては領域横断的な議論による審査を行い、災害に強く、将来にわたって文化遺産の価値が育まれるような歴史都市のありかたを探究します。提案の切り口は、上記のテーマに主眼を置く限り、どのようなものでも構いません。本コンペティションでは、既存の概念に囚われない、自由かつ真摯なアイデアを募集し、何らかの形でケーススタディとして実施し、実際の施策に反映させることを目指しています。
立命館大学では、文部科学省による大型研究プロジェクトであるグローバルCOEにおいて『歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点』を平成20年から5ヶ年の研究計画として始めています。またこれに先だち平成15年からの21世紀COE「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」においても文化遺産防災に関わる研究を行ってきました。これらの研究は、歴史都市に多く残されている文化遺産を、地震や洪水、火災、あるいは土砂災害などの自然災害から守ることを目的としています。たとえ千年の昔から遺されてきたものであっても、過去の50年、100年で都市の構造が変わったことで、各種の災害に対して極めて脆弱な状態になっています。このような危機的状態にある文化遺産を災害から守るための学際的な研究活動の一環として、2009年度から「文化遺産防災アイデアコンペティション」を行うこととし、今回が第3回目になります。
2011年7月2日(土)に立命館大学琵琶湖草津キャンパスにおいて、第3回文化遺産防災アイデアコンペティションの第2次審査会と表彰式が実施されました。全国から45作品の応募をいただき、その中から選抜された10作品に対して公開講評会が行われ、その後の審査員による協議を経て、特別賞を含む計10作品に対して表彰が行われました。表彰の対象作品は下記の通りです。
応募者の皆様および会場にご参加いただきました皆様のご協力に感謝を申しあげます。
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